ジャーナリストのパソコンノートブック
(114) パラダイムシフト(人間の臓器を3Dプリントで作る)

   医学の分野は長い事保守的で,ギリシャののヒポクラティス以来大きな変化を遂げていないと思ったが,この数年,医学に対するパラダイムが大きくかわってきた。その一つが臓器をコンピューターで3次元印刷して再生しようという試みだ。ヒトが人間の臓器に命をあたえるのだ。
  医学界は人間の臓器を3D(3次元)プリンティングで作成しようと大きく活気づいている。3Dプリントは18年前に導入されたが眼鏡や,自動車部品,建物,飛行機など応用は無尽蔵であるが、人体にはカスタム補聴器、義肢、歯科器具などヘルスケアーの分野で使用されてきた。各国の大学の研究機関で再生治療のため機能的なヒト組織を印刷するためbioprinters(3Dを印刷機を使って)より複雑な構造を作成するため様々な試みが行われている。3Dプリンターの積層造形という手法で超薄層を一枚毎積み重ね人間の臓器のプロトタイプをつくる試みがおこなわれている。人間の組織には細胞混合物製の「バイオインク」が用いられているので基本的にバイオインクが組織を形成することになり、層ごとに細胞の3次元構造を構築するために使用される。研究者達は最終的に、臓器置換えの為の臓器を作る為に印刷した「ティッシュ(組織)」を使用出来るようにと願っている。内蔵をを組織で満たす実質性器官は心臓,腎臓そして肝臓だ.養分を吸収して、老廃物を排出するため血管網が必要だ。ペンシルバニア大学細胞組織加工研究所は内蔵の血管網の複製の印刷に成功したという.一方スコットランドの大学研究者達が3Dプリンターで人間のES細胞を積層印刷して肉塊を作る事に成功し,この技術は人工臓器の組織の部分を作る事に応用できるかもしれないと期待されている。この肉塊の組織に血液網を張り巡らしたらと云う考えがあるが,実際はES細胞の特定の細胞に導く技術の微調整も,大きなハードルだという.もっとも単純な生物化学的構造を持つ臓器の一つである肝臓の3Dプリントを作る事を目指している。スコットランドの研究者達は人工肝臓が出来れば,薬の毒性を調べる為に多くの動物を殺してきたが,人工肝臓で動物が命を落とさずに済むと英国人らしい事をいっていた。
  昨年米国の医学界、バイオエンジニアリング、製薬業界、コンピュータ業界はある実検の成功に革命的衝撃を受けた。サン・ディゴのバイオベンチャーのOrganovoが、医学研究や再生治療の為の機能的ヒト組織3Dプリンターを使用して史上はじめて人間の肝臓の小さなレプリカ製造に成功した。それは厚さ0.5mm,幅4mmの「ICチップ上」の小さな肝臓だが,普通サイズの肝臓とほぼ同じ機能が果たせるとの事。この研究がもっと進めば、いつか3Dプリントした人工肝臓が移植できる可能性があるということだ。このミニ人工肝臓は様々な朗報をもたらした。従来のヒト肝臓組織の実検では、ごく一部を使っているので期間は2日しか使えず、肝繊維網全体の動きを再現できなかったが。このミニ肝臓は5日間使えて、実物の動きもシュミレーション出来た。その後の記録更新して,40日生きた.ホルモンや薬を身体に運ぶタンパク質のアルブミンや、脂肪を運ぶコレステロール、アルコールを分解する酵素もしっかり生成されているという。   
 組織を作成する大きな障害は生命維持に酸素や栄養素とそれを提供する為に必要な血管系を製造することだ。Organovoは血管の問題は克服していると述べた。Organovoは「より大きな血管で500ミクロンの厚さを達成している.これを理解するにはプリンター用紙は100ミクロンであるので,Organovoが印刷された組織がお互いの上に積み重ねられた用紙5枚の厚さである。しかし殆どの肝組織を構成する細胞を印刷するには十分ではない。生きている人間の臓器を作成する為に結合されなければならない組織において異なる機能を有する細胞の複数の種類が存在する。 

 Organovoは良好な細胞生存率と厚い血管組織を達成できた事と同時に小さな血管網を開発する機能を実行する繊維芽細胞及び内皮細胞を持ってくることが出来た、とマイク・ルナール副社長は語った。
   臓器移植は絶望的な臓器不足で米国では,医者達は人工臓器の作成に大きな期待を持っている.例えば腎臓であるが121,000人が臓器調達,及び移植ネットワークによる腎臓移植を待っているという.毎日18人が移植を待ち切れず亡くなっているという.日本では腎臓移植希望者は12,541名で,その内移植を受けたのは200名で,さらに絶望的である。世界中で10万人が臓器移植を待っているという。日本では子供臓器移植が禁止されているので,難病の子供が手術代のカンパを受けて、何千万円の臓器移植手術を受けに米国に出掛ける場面をTV番組で見るが,早く3Dプリントで作成された人工臓器の移植を日本で受ける事が出来たら,どんなに移植手術代の節約,又元々自分の既製の心臓や,腎臓を印刷するので,移植する臓器もカスタマライズされたもので,拒否反応も起きず,ずっと安全な移植となることであろうと思ってしまう。
  ICチップ上の肝臓の小さな破片の意味するものは大きい。この人類最初のチップ上小さな肉片を香港の大金持ちが大金を出して買と云う記事をネット上で読んだ.バイオプリントは幾つかの製薬会社は療研究を行う役割を果たしており,薬物検査コストを削減することになる(FDAアメリカ食品医薬局は経口薬は肝毒性テスト合格、不合格をきめる)。技術的にも製薬会社には大いなる節約となる。製薬業界では医療研究者は開発の初期段階で薬物テストをする為に,2次元細胞培養物を使用している。2次元(2D)細胞 培養は正確に人間の組織を反影していない。3D  テストは製薬会社が開発の多くの資金を投資する前の早い段階で薬が障害を起こす事が判明するので,より正確結果を提供する。そして,313億ドルの研究開発の為のバイオ医療品業界の予算の最大の割合を占める臨床実験で無駄なコストを避ける。臨床試験での薬剤開発には時間とお金がかかり過ぎる,新薬開発には12年もかかり,12億ドルのコストがかかる。3Dによるバイオプリンティングで早く薬を届ける事が出来る,素晴らしいアイデだと思うし,製薬業界のトラブルを大幅に節約するとOrganovoの役員は語る。

 人間の3Dプリンターで作成した臓器を移植するのは10年先のことかもしれないが、最先端の3Dプリンターはすでに手術の現場で変化をもたらし始めている.人間の内蔵の模型を作製できる工業用3Dプリンターを提供しているのは世界最大のストラタシスやスリーディ・システムズ等だ。それらプリンターはコンピュター断層撮影(CT)など医療画像を使用して半透明のモデルを作成する事が出来,医師はそれを使って血管の方向や腫瘍の正確な位置など肝臓や腎臓の内部構造を把握できる。今年5月京都大学付属病院で夫から提供された右胚の一部を反転させて重い肺疾患の妻に移植する生体肝移植の世界初の手術に成功した。事前に3Dプリンターを用いて患者の肺や血管の精た伊達洋至教授は話す。3Dプリンター作成は名古屋市立大学で行い、技術の確かさを証明した名市大は6月に「医療デザイン研究開発機構」を設立し,全国の病院に詳細な模型の提供を始めるという。10年先の日本の医学の形状はかなり異なってくるであろう。外科手術現場ではCAD(コンピューター支援設計)技術者、3Dプリンター作成者や解析者などが外科医より幅を利かす様になるかもしれない。ただ一つ確かなのは10年先の医療は非常にカスタマイズされたものになるであろう.内蔵の手術も個人の3Dプリンとで作られた臓器を移植するもので,薬の処方もカスタマイズされたものであろう。


パライムシフト2(癌はクラウドソースで募った治療法で治す)
  もう一つのパラダイムシフトはガンの治療法だ。 「細菌を用いた3Dプリントによる癌治療」と云う何か訳の分らない最新治療法がアンドリュー・ヘッセルという合成生物学者によって、米国のトップの大学、遺伝子学者,ウイルス生物学者,CADnano学者達に働きかけてガン治療のソフトウエアーを呼び掛けている。
  治療を安くする為にクラウドソースで治療法を一般に広く募ろうとしている。ヘッセル自身アムジェン(AMGM)と云う大手製薬会社に12年勤務していた。米国の製薬業界は15年間に12億ドルのガン治療薬開発資金を使ったが,ガンによる死亡者は効果的なガン治療薬は開発されなかった。ヘッセルは自らAutoCADという114億ドルの3Dプリントのソフトウエア会社の経営者である。
   彼の持論はガンの腫瘍は独自のDNAを有している。彼の使命は特定の遺伝子マーカ-のみを運ぶ細胞のみを攻撃するウイルスを合成する為の簡単で、アクセス可能なツールを作る事である。“Synthetic Biology”(合成生物学)はそれを提供出来たという。過去数十年に渡りバイナリーコードとゼローinto, 科学者達はG(グアニン)、C(シトシン)遺伝子アルファベットA(アデニン)T(チミン)の4つの文字を変換する方法を学びました。細胞は小さなコンピューターの様なもので、DNAはソフトウエアーの様なものだという。今日DNAプリントショップの数十は本質的にヘッセルと呼ぶものによって、生物学にディジタル設計を回すことができる「3DプリントのDNA, 権威ある機関でバイオハッカ-や学者があらゆる種類のものを行う為にヘッセルのツールを利用している. 一方若者はこのフィールドの新しい可能性を謳歌した。ビル・ゲイツでさえ「自分が今日の子供であれば、生物学のハッキングに入っていただろう. ずっと面白いから」とWeird誌に書いている。人の良い映画俳優マブラッド.ピッドはカフェでコーヒーカップやスプーンを置きっぱなしにする、それに若いハッカー達が群がり、ブラッドのDNAシークエンスを獲得しようとする。ハッカー達はブラッド・ピッドの遺伝子配列を本人自身より詳しく知っており、医学的背景も本人より詳しい。

ヘッセル氏が頭を悩ませるのが特定の遺伝子構造との個人だけを攻撃目標にした生物兵器を作成する事が可能になったことだ。 2005年にインフルエンザの研究者が一度に2千万人の人が死亡した1918年-1919年スペイン風邪ウイルスの作成に成功した。2010年にヒラリークリントン国務長官が各国にある米国大使館にバイオテロリズムを警告している。FBIはハリウッドのサイバーテロの様なシナリオを恐れていた。例えば,オバマ大統領のDNAにアルツハイマー病の遺伝子を合成するし、毒性の軽い風邪などのアデノウイルスにベクター(運び屋)として細胞に送りこむ,テロリストはマリワナタバコに吸収させ,女子大生に送るかもしれない。彼女はマリワナを吸い,軽い咳をするが軽い風邪だと気にしない。彼女が大学で咳をする度にアデノウイルスは大学内に広がる。その週に大統領は大学でスピーチした。聴衆の学生達は軽い咳をした。オバマ大統領の体内に入ると,特別な遺伝子が起動する。この遺伝子配列を持つのはオバマ大統領だけだ。物忘れが激しくなった大統領は辞任する羽目になる。サイバーテロリストの任務完了。大統領のゲノム情報が採集されない様に彼が外で使った食器,紙コップ,ベッドシーツ,鼻をかんだティッシュなどはセークレットサービスが集めて、燃やしていると云う。念の為に、日本の皇室はと,宮内庁の知人に聞いてみたら,皇室の方は外で使ったものは全て,お付きの方が持ち帰っているという。ヘッセル氏はDNA合成店にエボラウイルス,天然痘,炭疽菌など危険な配列の為の注文を全てスキャンする方法を取り、セーフガードを実施した。

  ヘッセル氏は癌治療で,クラウド・ソースで1日だけの治療方法を募ると云う民主的方法を選んだ。Autodeskは科学者の為にCADnano (以前3D DNAの折り紙ナノ構造をデザインしたとき使ったツール)とか、クラウドベースのプラットフォームを提供する。 Organovo, ハーバード大学のWyss インスティチュ--トや,同校のチャーチ教授,マサチューセッツ工科大学などの協力も得られた、  
ヘッセル氏は2009年にピンク陸軍協同組合と云う非営利団体を構築した。その時はたった1人の乳がん患者の為に1日利用のオープンソース開発をめざした。何千人もの人々が1人の治療に寄与する可能性があります、医師が患者の腫瘍サンプルを採用し、ピンク軍のメンバーや興味のある人がオンラインゲノム情報を解析し、癌の特定の生物学的特徴を有する細胞を追跡し、殺す為にウイルス株を設計する事になる。ウイルス粒子が産出され 次いで精製されるであろう患者の腫瘍や血流に生じた薬を注入する前に、医師は患者の正常及び疾患組織の両方のサンプルとテストするだろう。今回も同じ手法をとると云う。何千と云う人々がたった1人の治療に貢献するのです。腫瘍は癌細胞の混合集団を持つ事が出来、これらの細胞はDNA変異の数百を持つ事が出来るので、患者はおそらく、幾つかのカスタムメイドウイルスで治療される必要があるだろうが、彼のオープンソースモデルは基本的には、底なしの薬局を作成する事ができる.そして薬は1人の患者のみに特有なものでFDA(米国食品医薬局)の承認を待つ必要はないという。

 
    

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