ジャーナリストのパソコンノートブック
(100)癌の遺伝子標的治療法がバイオ兵器として暗殺に応用

    安部晋三さんが自民党の総裁に選出され、第96代内閣総理大臣に就任した。前回90代総理大臣を辞任するに至った病気が劇的な新薬のお陰で寛解したか らだと説明した。前回は退任理由を胃痛としか述べず、病名を伏せていた。当時、安部晋三氏の出身地、長門市(旧油谷町)を訪れたばかりだという立花隆さん と話す機会があった。執念のジャーナリスト立花さんは安部一族の墓所を調べ,安部家の墓誌には50歳以上長生きをした親族が殆んどおらず、短命の家系であ る事が分ったと興奮して語っていたのを思い出す。その後安部晋三氏の病名が「潰瘍性大腸炎」という遺伝子系の疾患で、激しい下痢と血便を繰り返す大変苦し い病気である事が判明した。医者によるとこの病気は自己免疫疾患の一種と云われ,免疫システムが暴走して、自分自身の細胞に攻撃をしかけるもので間接 リューマチ、多発性硬化症、皮膚アトピー、気管支喘息等多種多様の免疫疾患があるという。 安部氏の場合、17歳で発症したと云う,親戚にも自己免疫疾患 のクローン病の人が出ている。
  安部首相に画期的に効いたという薬剤はアサコールである、この薬は米国では2006年から発売されており、軽症、中症状の潰瘍性大腸炎に処方されている。 この病気はストレスで悪化する事もあリ、2007年当時従軍慰安婦問題、南京虐殺についての名古屋川村市長擁護発言などが大腸炎を悪化させたのであろう。 しかし、安部首相はまだ切り札を使う事が出来る。分子標的薬「レミケード」(薬効成分:インフリキシマブ)が開発されたからだ。この薬は分子生物学が明ら かにしたメカニズムに基づき、病気に特異的効果を持つと考えられる物質を狙って作成する薬である。炎症の根本的段階の物質TNFaを捉えて排除し、免疫の 活性化を止める働きがあると云う。この薬は「ヒトゲノム研究により」開発が可能になったゲノム創薬で、クローン病や関節リューマチの治療に成果をあげてい るという。
    30億塩基を持つヒトゲノムを全て解読する研究は遺伝子の二重らせん構造を発見したノーベル賞受賞のジェームス・ワトソン博士らによって1988年始 められた。遺伝子にはA(アデン) T(チミン)、G(グアニン), C(シトニン)がという4つの塩基(ATGC)が連なったもので、この文字を3つずつ組み合わせたものがDNA言語の単語にあたり、電子情報が操作をしや すい様になっている。コンピューターの世界には「Moorの法則」がある。CPUコンピュター の半導体の性能が18カ月から24カ月ごとに2倍になるというものだ。1970年代の世界で一番速いCrayのスーパーコンピューターは一部屋分のスペー スを必要とし、8百万ドルも掛かった。今日ポケットに収まるiPhoneは1970年代のCrayのスーパーコンピューターの演算スピードより100倍も 速く、値段は12,000分の1である。ヒトゲノムの全塩基盤を解読するには少なくとも千年掛かると云われていたが,構造を自動分析するコンピューター機 能等の開発により解読スピードの飛躍的にあがり、予定よりずっと早く2003年には到達点に辿りついた。
   遺伝子の解読技術が実用化されている分野の一つが病気の診断である。 若者の間にはゲームセンターのノリで遺伝子診断を受ける者がいる。 遺伝子診断で 将来病気になるリスクがあると結果が出れば生命保険に加入出来ないし、就職の内定を取り消される事もある事も覚悟しなければならない。生命保険に加入する には過去の病歴を全て申告しなければならない。米国でも遺伝子は究極のプライバシーで個人遺伝子のプライバシーは守るべきだと生命保険会社との問題が表面 化している。生命保険会社は遺伝病のリスクがあるとか、癌のリスクが高いという事で、掛け金を高くしたり,加入を拒否したりして、差別していると批判され ている。「遺伝子診断により早めに病気を見極め、標的治療を施し、最も効果的な予防措置をとる事で、患者はかなりの額の医療費を節約出来る」とペンシルバ ニア医学大学のアームストロング博士は語る。これに対し、米国政府は公務員の採用や解雇に際し、遺伝子診断の結果を使ってはならないと通達を出し,遺伝子 のプライバシーを守る立場をとった。
    米国医学会では子供の出産前遺伝子診断の必要性について、診断結果を母親に告知すべきかどうか、医学者の間で意見が割れている。「10年後の新生児 は,自分の全のゲノムの配列とその使い方を(マニュアル)が入ったDVDを付けて、退院して自宅に戻っていく,この場合、赤ちゃんの本当の親はコンピュー ターと云っても良い」とジョークが出る程だ。親にとってショックなのはこの世に生まれ出てたった数時間たったばかりの赤ちゃんに50歳になる前に痴呆の症 状が現れアルツハイマー病になるリスクがあるとか,リューウマチになるとかの診断結果がでることだ。医者も、遺伝子診断の悪い結果に対し口をつぐむと云 う。生まれたばかりで50年後の病気のリスクを一生涯背負って生きていく事になるからだ。この胎児は20歳を過ぎたら子宮がんになるリスクがあると大袈裟 に告知しない事だ、母親は間違いなく堕胎するからだ。癌を発病するリスクがあると遺伝子診断され、告知されなかった男の子が自転車や激しいスポーツ事故で 骨折した時、X線で診断した外科医は事故による骨折以外に他に何かがあると疑い,さらなる精密検査で幾つもの癌腫瘍を見付けた場合もあるという。遺伝子診 断で発見した病気になるリスクを親に伝えないのは非倫理的だと云う医者もいる。 昨年この加熱する一方の論争に対し“全米産科、婦人科大学連合会”が ガイドラインを発表した。「個人化(パーソナライズ)した遺伝子のプロフィールは病 気の発見、予防に有望だが、この診断法はまだ完璧と云う域に達していないので、薦められない」と発表した。米国小児学会は「明らかに有望な治療法や効果的 予防法が見付からない以外、子供に対する遺伝子診断はすべきでないと」見解を発表した。一方生まれる前にあらかじめ死に至る様な病気の遺伝子を持っている かどうか知る事ができれば,その後の悲劇を回避する事ができると考えるのも当然だ。胎内の赤ん坊に遺伝子治療を行う親もおり、病気の遺伝子を正常な遺伝子 と組み替えたり,遺伝子の良いとこ取りだけをした健康なデザイナー・ベービーが誕生しているという。
  一カ所でも遺伝子が欠け、遺伝子が異常を起こしていたら、癌や慢性病等の病気が起きる。「遺伝子治療」は正常な遺伝子や免疫力を高める遺伝子ベクター(運 び屋ウイルス)を利用して体内入れる方法である。ウイルスの運び屋と云う性質を利用して、人工遺伝子を細胞の中まで運び込ませる事ができる。人間の身体に は外敵から身を守る免疫力がある。ウイルスの中には細胞に忍び込んでも人間の身体に破壊的行為を行わない弱体ウイルス(アデノウイルスなど)があり、人工 遺伝子を細胞内に持ち込み、染色体と絡み付き,合体を起こし、“遺伝子の組み替え”を起こす事ができる。 
    標的を定めたテイラーメイド(個人化)した治療法が最先端の癌治療として認知度を高めている。癌患者の場合,癌の増殖を抑える遺伝子「P53」をアデ ノウイルスベクター(運び屋)によって直接病巣部に投与する(月1回の割合で幹部に注入する)。P53は注入された細胞内で細胞の増殖を抑制するタンパク 質を作り、場合によっては癌細胞のアポーシス(自殺)を誘導する。私の友人(元英国外交官)は もう何年間も肝臓癌を患い、3年前にロンドンで会った時は他の臓器に転移し、とても辛そうであった。その時最後の手段として遺伝子治療を始めると云ってい た。多分高額の治療費の為か、貴族の称号をもっている親から相続したロンドン高級住宅街チェルシーにある邸宅は売られていた。この過去3年クリスマス・ カードや年賀状を出そうと思ったが, 何かあったら家族に失礼だと思い遠慮していた。それが今年、この友人から元気でいるとe-mail を貰い、遺伝子治療が効いた事が分った。彼の場合、個人の遺伝体質に合わせたテーラーメイド(個人化))治療が上手く行っているのだと思う。
     新しい癌治療は一カ所だけ周囲の細胞と変わっていたりしている細胞を標的とする治療法で、フィンランドのOncos Therapeuticsという遺伝子ターゲティング(標的)治療は300名もの治療成果をあげているという。これまで行われてきた,ケモセラピー(化学 療法)は、絨毯爆撃をする様なもので,傷つけなくて良い健康な細胞まで痛めつけ、体力を弱らせると云う見返りの被害(コラテラル・ダメージ)も受ける。  遺伝学が進んだお陰で癌細胞は各々の患者の個別のものでるあと云う認識が高まり,研究は個人の体質に合わせた治療法,つまり,個人毎に違う癌細胞を各々異 なる方法で検査し、レーザー光線の様にピンポイントを当てた治療法,つまり,デザイナーセラピーに移行していった。このパーソナライズ(個人化)医療が, 「パーソナライズ生物兵器」になるのにそんなに時間はかからない。   

   遺伝子を利用した悪質なサイバー・ハッキング,サイバーテロは今の所起きてはいないが、コンピューターネットワークでのサイバー攻撃は深刻な事態になっ ており,日本が世界のサイバー攻撃の標的になっている感もある。昨年10月東京大学がコンピューターウイルス攻撃を受け,11月にはJAXA(宇宙航空開 発研究所),12月にはJAEA(日本原子力開発機構),1月には農林省)がウイルス攻撃を受けた。2月1日にツイッターが25万人分の個人情報にハッ カーが不正アクセスしたとブログで発表。クレジットカード番号の変更を呼び掛けている。たった数ヶ月でこれだけのサイバー攻撃である。 サイバー攻撃は国 家レベルから,愉快犯的な個人のハッキングまでがあると云う。2000年カナダのマフィアボーイと名乗った高校生がYahoo, eBay, CNN, Amazon, Dellのコンピューターシステムをフリーズ,スローダウンさせた。米国の電力発電所に攻撃を仕掛け,大停電を起こした例もある。
    現在は素人がコンピューター上で遺伝子の解析や蛋白質合成のシミュレーションする事が流行っている。MIT(マサチューセッツ工科大学)はジャーナリ スト達に最近の研究結果を,研究材料から,研究方法まで仔細に報告するオンライン・コースを設けている。BioCurious, GenSpaceなど遺伝子工学をオタク達の遊びに変える様な実験用具を売るベンチャーも現れ,バイオ・オタク達に遺伝子学者なった気分にさせる。 破産 したリ,合併したゲノムベンチャー企業から中古の実験室の用具を安い値段で手に入れる事が出来る。ビル・ゲイツも最近のインタビューでもし自分が今日の少 年なら,コンピューターのハッキングなんてありきたりでつまんない、バイオ関係のコンピューターにハッキングすると語っている。 2002年エカード・ウイマーと云う大学の生物学研究員がメールオーダー で注文した人工DNAでポリオ(小児まひ)の遺伝子ゲノムを作りだしてしまった。当時7,500のDNAヌクレチド(塩基)の合成には30万ドル掛かり, 何年も要したが,今日たった3ドルで数分間で作ってくれる。世界はこのポリオを撲滅するのに何億ドルも費やしてきたのである。 テロリストが3ドルの細菌 ウイルスを使ってバイオ兵器を作ろうとするのもあり得る話である。 米国政府は日本のカルト集団オウム真理教のサリン攻撃より,教団が作った炭疽菌兵器の 大量殺人能力に脅威を感じたと云う。2011年米国では炭疽菌がばらまかれる事件が頻発した。炭疽菌は上院議員までメールで送られたと云う。

    ここに来てFBIはさらなる脅威にさらされている。これらハッカー達が遺伝子組み替えを狙ったバイオ兵器を使ったテロリストになったらどう対処すべき か? 実はこれは紙一重の様な話などである。このバイオ兵器攻撃は,誰一人攻撃が行われている事に気がつかない,病気が静かに進行し,亡くなる、なんの証 拠も残さない厄介なものである。 FBIが描いたシナリオはまるでハリウッドの映画の様であるが、起こりうる話である。そのシナリオはコロンビア大学の 20歳の学生がコンピューター上に書いたシミュレーションで,ウイルスの運び屋と云う性質を利用して、アデノウイルス等に人工遺伝子を人間の細胞内に運ん でもらう、この人工遺伝子にはある時間(又は年数)がきたら、アルツハイマーを発症する様に組み込んである。このコンピューター上のシミュレーションが上 海で人気のあるオンラインサイト「バイオ・マーケットプレイス」に紹介された。数分後にアイスランドの遺伝子ベンチャーが製造権を取り、5984対の遺伝 子の青写真を実物の遺伝子に作り替えた。その内の10ミリグラムが水溶性の極小錠剤としてFedExの封筒で出荷された、2日後ハーバード大学の女子学生 が宅配小包を受け取った。彼女はその錠剤は以前オンラインで注文した事のあるパーティー用の精神高揚薬だと思い込み、微小錠剤を鼻の穴に押し込み,深く吸 込んだ。彼女がパーティー服に着替えている間に、錠剤は溶け始め、彼女の細胞に吸収された。彼女は吸い込んだ錠剤で風邪に感染した様に感じ、微熱を感じ た,そして、くしゃみをして何億ものウイルスをまき散らした。微熱とくしゃみ以外にこれと云った被害ももたらさないのにこのウイルスはキャンパス中にバラ まかれた。このウイルスが細胞に運び込んだ人工遺伝子は特別なDNA配列を持ち,その配列は第二の役目を起動させる鍵の様な働きをする。第二の配列は記憶 の喪失、痴呆化、最終的には死をもたらす様な神経システムの破壊するようプログラムされている。このDNA配列を持つのは米国の大統領、バラク・オバマで ある,彼はその週の後半ハーバード大学のケネディ.センターで講演をする事になっている。その講演には何千人と云う学生が咳やくしゃみをしていた。大統領 のシークレットサービスは季節は12月だし,風邪をひいている人が多いのも当然だと気にも止めなかった。会場の風邪ウイルスはオバマ大統領だけの標的遺伝 子をスィッチ・オンさせ、そして神経性の病気を起こし,彼を退任に追い込む。 2009年1月のオバマ大統領就任の集会時に遺伝子組み替えウイルスの使用 を恐れて、FBIは400頭もの嗅覚の優れた警察犬を導入したと云う。香水の様なスプレーで大統領のDNAに炭疽菌を組み込んだアデノウイルスを噴霧する 事もありうるからだ。しかし、これらバイオ武器は殆ど無臭で、犬の嗅覚に感知されない。
   2010年のWikiLeakesによれば、ヒラリー・クリントン国務長官は各国にある米国大使館に対して、その国の首相,国際機関の代表者のDNAを集める様に命令したと云う。
    大統領のシークレットサービスは大統領の海外旅行時に彼が触った食器,紙コップ,ベッドシーツ,鼻をかんだティッシュn等を拾い集め、ビニール袋に入 れて持ち帰り、焼却処理すると云う,DNAを採取されない為である。調印式で使ったペンでさえ, DNAが採取される可能性がある。
     ヒラリー・クリントン国務長官は2011年12月7日のバイオ・有毒兵器コンベンション・レビュー会議で「テロリストや,その他民間の活動家が遺伝 子を活用したバイオ兵器を利用する能力は増す一方である,我々は注意を新たにしなければならない」とスピーチしている。
  遺伝子組み換えウイルスは細菌兵器と化学兵器を一緒にした様なものだと云う。あらゆる応用ができるという。人間の脳細胞を改造する様にした遺伝子を、タカ 派の首相を平和を愛するハト派首相に改造するとか、不妊の遺伝子を組み込んで民族ごと撲滅する等と云う手もある。オバマ大統領のDNAを持った赤ん坊を作 り、共和党が選挙でネガティブキャンペーンに利用する可能性も大いにあり得ると、民主党は心配する。
     中国訪問を予定している安部首相は中国側にDNAを採取されない様に気をつけるべきだ,安部首相は中国側から最も右翼的な政治家と警戒されているからだ。 
  この記事を書き終わった時、全く別の話題で、皇太子と雅子妃殿下が旅行する時、泊まったホテルで利用した食器、紙コップ、寝具、鼻紙までを全て持ち帰っていると云う話を耳にした。米国国務省のアドバイスを受けたのであろうか?   終

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