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(95)中国一人っ子政策は何時終わるか? |
私は自分へのご褒美として、時々ラスベガスに行きブラックジャック・カードゲ?ムを楽しむ。自分にはギャンブル運がない事を知っているのでパチンコなどギャンブル性の高い遊びはやった事がないが、ブラックジャックは自分の頭を使うゲームなので、負けても納得できる。ブラックジャックに固執するのは自分の記憶力の具合を知りたいからである。ブラックジャックはディーラーが配ったカード、他のゲーム参加者がどのカードを拾うか捨てるか、動体視力を必要とする位の早さで記憶する事が要求される。 よくTV番で老人の認知度を計るのに、鉛筆、自転車、リンゴなどと三つの名前を覚えさせて、その後100マイナス7、93マイナス7、86マイナス7はいくらかと簡単な計算をしてから、先ほどの三つの物の名前を挙げさせ,惚け具合を計る。ブラックジャックは究極の記憶力を必要とする、私は過去5回位ラスベガスでブラックジャックをしたが負けたことがない。勝つためのもう一つのコツは何時ゲームから抜けるかである。勝っているとき止めるのは難しいが,人間の集中力には波がある。長くやっていると疲れてきて、目が霞み、油断する。私は友達や、妹と一緒にゲームして、勝ちが続いているとき、そろそろ抜け時だよ!と合図してもらうことにしている。ギャンブルの軍資金に自分で働いて稼いだ原稿料,貯金を使うのは罪悪感を感じる、そこで余剰資金で豪ドル等の高金利の外貨を買う。今年はギリシャ,スペイン等の財務不安問題があり、為替が乱高下した。乱高下は投資に良いチャンスをくれる。豪ドルは欧州の財務問題と資源問題で売られた時が買いであり、この数年同じ様な乱高下をするので,以前の高さに戻った時が売りで、手数料(往復2円)を差し引いた時点でも,かなりの為替差益をもたらした。私はギャンブルの前哨戦には勝てた。 外貨預金に米国の銀行を利用しているが,彼等は「インドネシア ルピア」を勧める。米国大手証券会社もインドネシアは2025年までにアジアで一番の経済大国になるという。世界第4位の人口(2億4千万人)を持ち, しかも理想的なピラミッド型の人口形態で、10代から40代の働き盛りの生産人口が63%に達している。 錫やニッケル、天然ガス等豊富な天然ン資源、パーム油、ヤシ油、カカオ等の農産物で外貨を稼ググ事ができると云う、しかし2025年まで待ってインドネシア・ルピアで大もうけしても、ヨボヨボになった自分がラスベガスでギャンブルしているイメージが描けず、インドネシア・ルピア投資はパスする、驚いた事に、米国大手銀行や証券会社が「中国の成長神話を」を口にしなくなリ、中国の経済はもう駄目だという。安全で豊富に供給できる労働力は中国の輸出産業の競争力を支えてきた。しかし、中国は輸出で稼げなくなって、世界の輸出基地と云う役割は低下してきている、と米銀は語る。中国南部珠江河口の広州、深?、東莞等のデルタ地帯の玩具、アパレル加工等の労働集約製造業に労働者は以前程集まらず、政府は最低賃金を改訂し、毎年20%程引き上げている。2008年のリーマン・ショック以降農村に帰郷した2000万人の出稼ぎ労働者の一部は戻っていない。出稼ぎ労働者の供給不足は「民工荒」と呼ばれ、労働力不足と云われる背景になっている。 中国の「一人っ子」政策が労動力の不足の一因になっているのも確かだ。「一人っ子政策」は人口が13億を超えた中国で1979年に導入された。当時食料不足が慢性化し、食料、生活物資の配給制の実施を余儀なくされた。鄧小平は経済改革を着手する前に、人口の抑制に乗り出した。人口抑制政策は大多数を占める漢族に対して行われ,少数民族は除外された。中国国家人口計画生育委員会は「計画出産弁公室」と云う役所を設立、全国に100万もの支所を設け、50万人の正規職員と660万人に達する非正規職員を採用した。中国の夫婦の3分の2(9億人)がこの役所の管轄下に置かれる。母親は 第一子の出産後、IUDと云う子宮内避妊具を装着しなければならず、 四半期毎に適正に装着されているか当局のチェックを受ける。第二子を妊娠した母親に堕胎を強制する権限を中国の省レベルの法律で認めている。第2子と云う理由で行なわれた人口中絶の件数は1983年の1437万件をピークにして減ってきてはいるが,2000年以降は年700万件で推移していると云う。ある省では既婚女性に対し妊娠検査を定期的に行い,この検査を拒んだ女性に罰金を課している。2007年から地方の農村地区では、第一子が女の子であった場合、罰金を払えば夫婦は第2子を産む事が許されるが、しかし 第2子を持つ事に対する罰金は夫婦の年収の合計の20%に相当し、しかも7年間も払い続けなくてはならない。農村では一人っ子政策に違反して第2子を出産した住民に対する罰金だけで、毎年数百万ドルに上ると云われている。一人っ子政策の予算は1990年代に4倍に増え、防衛予算より早いスピ?ドで1998年48億元に達したと云う。1990年代に中国の政府官庁が人員を50%削減した時も、計画出産弁公室は強く抵抗した。「我々の徹底した人口抑制政策がなかったら中国の人口は現在の13億4千万人より、4億人多かった筈だと成果を自慢する。地方の計画出産弁公室の職員達は中絶や、子宮摘出等の不妊手術の割当数が達成出来ると奨励金が与えられた,これが強制的中絶、脅迫等に拍車をかけたと云う。人口抑制計画が達成した職員の昇格が行われた。また計画外の子供を妊娠したと密告した市民には奨励金を与えている。江蘇省の公務員の女性は結婚前に子供が産まれてしまった事で,政府職員の仕事を失った事で裁判を起している。ある教員は計画外の第2子を産んだ事で退職金、年金を取り上げられた。今年第2子の出産許可が間に合わなかった安康市の女性は法的根拠がないのに身柄を拘束され、強制的に7ヶ月の胎児を中絶させられた。血まみれの胎児と共に横たわる女性の写真がインターネットに出回った事で世界的注目を浴びるようになり、市当局が強制的堕胎の違法性を認め、異例の謝罪をした。中絶計画出産外の第2子は子供手当、健康手当、公的教育など、村や町の社会手当の適用を受けられない。今年2月中国政府は地方政府に対 して「一人っ子政策」の脅迫調のスローガンを中止する様に命じた、地方政府が政策の貫徹のため、不快なスローガンを使って国民を怒らせたり、社会的緊張を高めたりする事を防ぎたい考えだ。私が見た一番毒々しいスローガンは「1人の赤ん坊の出産が許すなら、血を川の様に流してやろう」と民家の白壁に書かれたものだ。政府が禁止した表現は「規則に従わなければ家族を皆殺しせよ!」、「二人目を許可するぐらいなら、おまえの子宮をこすりとる」、「避妊手術をしなければ、家を解体する」 「捕まれば避妊手術させる、逃げれば追い掛ける、自殺したければ縄か、毒薬の瓶をやろう」 「一人っ子政策」はメッリトとデメリットがある。この政策が導入されるまで、一家族子供の平均人数は4-5人であったため、共働きの夫婦の給与所得で生活が困窮し、生活必需品以外の買い物や消費は殆ど出来なかった。一人っ子政策が導入されてから,共稼ぎの夫婦が扶養する子供の数は1人となり、生活負担が軽減された。その結果、80年代初頭から働き盛りの夫婦には生活を楽しむ余裕が出来て、消費振興大きく寄与した。この種の調査研究では初めてのカリフォルニア大学の2007年の調査でも一人っ子政策は際立って効果的である事が判明した。中国の1人の女性が産む子供の数は1980年2.63 人から 2009年の1.61人に激減している。中国は経済学者がよく口にする "Demographic dividend" (人口動態によるボーナス、労働人口比率の上昇が経済メリットをもたらす配当)を享受した。世界銀行によれば、労働人口の上昇は中国の経済成長に0.9%の貢献をしているという。中国の出生率は1.5人に落ちているので、中国の人口は2030年を待たずに、14億でピークを迎える。 さらに労働人口が10億人でピークを迎えると、「人口動態のボーナス」は消えてなくなる、来年2013年から労働人口は減り始め,日本経済と同じ道をたどる事になる。 中国は今日20歳から24歳までの労働人口1億2千万人を抱えるが,国連の経済部によると、この若い労働人口がこの先10年間で20%も減少すると云う。 米国やヨーロッパは高齢化社会に移行するのに100年掛かったが、中国はたった40年齢化社会に移行する。2030年には65歳以上の老人人口が15%になる高齢化社会の到来が予想される。「我々は中国が金持ちになる前に高齢化に移行するのを目にするかもしれない」とフィリップ・オキーフェ世界銀行の北京コーディネーターは語る。 一人っ子政策で引き起こされた問題は「4?2?1」家族構成問題である。4は父方と母方の祖父母である。2は父母で、一人っ子は6人の大人に囲まれて育つ。祖父母は個人預金や退職金で暮らすわけであるが、脆弱な社会保障制度の中国では、介護を子供や一人っ子の孫に頼る事になる,一人っ子は6人の大人の面倒を見切れない。ある省では、夫婦がお互いに一人っ子であるばあい、もう一人子供を産んで良いと法律が改正された。 今後一人っ子政策が社会的時限爆弾になりかねない。 2007年から地方の農村地区では、第一子が女の子であった場合、罰金を払えば夫婦は第2子を産む事が許されるが、しかし 第2子を持つ事に対する罰金は夫婦の年収の合計の20%に相当し、しかも7年間も払い続けなくてはならない。超過の子供を産み、重いペナルティー支払いを逃れるために出生登録をしない黒孫子(ヘイハイシ)の数も増えている。 中国人女性が第2子を「海外」で出産する場合は、厳しい一人っ子の規則から免れる事が出来る。そこで中国本土の妊婦達は香港を目指した。産まれた赤ん坊は香港のパスポートを所得出来る。中国本土のパスポートと異なって、香港のパスポートで北米(米国、カナダ)に渡る事が出来る。次々と香港を訪れる中国本土の妊婦を香港人は「イナゴ族の襲来」と表現した。しかし香港政庁は、中国政府に気兼ねして、香港の公立病院での非居住者の出産に制限を加えはじめた。中国本土の裕福な妊婦は香港の先の太平洋を目指し、北マリアナ諸島のサイパンに向かった。米国は生得市民権法を採用しており、北マリアナ諸島で産まれ子供には米国の市民権が与えられる。中国の面倒な第2子の規制を免れ、おまけに米国のパスポートも手に入れる事ができる。子供が成長したら、両親を米国に招き寄せてくれるであろう。現在サイパンでの中国人の出産が急増している。 一人っ子政策は甘やかされ、家族内で、"little emperor"( 小皇帝)の様に扱われる。一人っ子は兄弟がいないため、コミュニケーションや協力能力に 欠けると云われている、自制心もなく、適応能力もないといわれる。2007年に政府の諮問機関が、一人っ子は性格的に欠陥のある子供になりやすい、一人っ子政策を撤廃して、子供二人にして欲しいと云う要求を出した事があった。以前最高級の松坂牛(A?5 ランク)は誰が食べるかと云う日本のTV番組で、最高級の松坂牛の塊はさらし布に巻かれ、包装され、中国人がナザックに入れラレ、北京に運ばれた。北京の日本の鉄板焼きレストランには、裕福そうな中国人夫婦が、10歳位の小太りの息子に松坂牛のステーキを注文した。息子は美味しいとか、何の反応も見せず、黙々と牛肉を口にした。そして「もう一枚」焼いてくれと注文した時、両親は息子が気に入ってくれた事で大喜びしていた、本当に小皇帝であった。 一人っ子政策は歪な男女比の問題をもたらした。毛沢東は「天の半分は女性が支える」と男女平等を説いたが、国民はこの教えに従わなかった。夫婦が1人の赤ちゃんを選ぶことになると、儒教的教えが残っているためか,男の赤ちゃんを選択する。その結果女の赤ちゃんの人工流産が行われたり、産まれたら直ぐ水をはったバケツに入れると云う伝統的方法が用いられた。中国の田舎の道路脇の看板に大きな字で「女嬰(女の赤ちゃん)を虐待したり、捨てたりする事を禁止する」という看板を見付ける事が出来る。望まない女の赤ちゃんを救うために、1992年養子縁組法が成立して、養子縁組数は1992年の2000人から2001年の55,000人と劇的に増えた。これは国際養子縁組みが盛んになったお蔭だと云う。ちなみに米国人の養子になった幼児の数は1992 年の 200人から、2005年の 7900人に増えた。しかし、一人っ子政策のおかげで男女のバランスが崩れてしまった。 男女のバランスは2000年に117:100 にも広がった。自然では103:100 から 105:100の比率であるという。 中国人口家族計画委員会によると2020年には20歳以下の若年層では男性は女性に比べ3000万人多くなるという。すでに1990から2005年までに中国では独身男性が増え、深刻な嫁不足の問題が起きている。特に農村地区では若い女性は工場での給料生活に魅力を感じ、快適な都市部の生活に憧れるので、農村に残る女性は極度に少ない。数年前から、中国農村部の深刻な嫁不足を当て込んで、北朝鮮の若い女性を拉致誘拐して、中国に密入国させ、農村部の男性に売りつける人身売買が活発化している。センセーショナルな新聞記事は「中国と北朝鮮間の性奴隷取引」と報じている。最初に北朝鮮少女を誘拐した中国人には1人頭80ドルから300ドル払われ、中国国境の役人への賄賂等も含め、業者間で何度も売り買いされ、最終的には1200ドルから1500ドルで中国人の夫に売りつけられると云う。彼女達は強制的な結婚を断る事は出来ない。中国語が話せないので仕事につけず、ストリッパーや、売春婦として働くとしても、警察に直ぐ捕まり、北朝鮮に送り返され、脱国者として強制労働キャンプに送られる。中国人の夫と仮の夫婦として暮らす方が安全だからである。ある北鮮女性は最初の中国人の夫に彼女のために7000元($850)も払ったと何度も云われ、逃げ出そうとしたら殺すと脅かされた。しかし彼女は直ぐ誘拐され、次の夫に売られた。彼女はそこで売り買いを繰り返すブローカーがいる事に気がつき、自分はまるで「豚」の様に取引されている事に気がついたと云う。北朝鮮の再教育労働キンプに送り戻されたこの女性は、その後韓国に脱出する事が出来たと云う。2010年の調査では浙江省の省外出身の既婚女性20万人の内、北朝鮮出身の女性が3万6千人いたと云う。北朝鮮から誘拐され、中国農村の男性に売り飛ばされた女性達である。彼女らの殆どは、北朝鮮に送り返されるより、十分に食べ物がある中国の方が暮らしやすい。近隣の人達も、保安員が調べにきた時は皆で守ってくれる。自分の今の生活を運命だと思って受け入れる以外にないと答えた。 中国の行き過ぎた人口抑制政策は労働力 供給の低下、労務費高騰、国際競争力の低下、少子高齢化問題、男女比の偏リ、北朝鮮からの若い女性の拉致、中国内での子供の誘拐等多くの弊害が明らかになっているにも拘らず、計画出産弁公室は自分たちの雇用の確保と罰金という既得権益を守るために、一人っ子政策の撤廃に猛烈に反対している。この政策は2015年まで緩和されそうもない。 終 柴田 |
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