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(91)オンライン・デートサイトは米国の結婚の主流となる |
米国では10年位前まではオンライン・デートサイトを訪れるのは、付き合う相手がいない息子、娘を心配した親や友人がオンライン・デートサイトにプロフィールの更新をする程度であった。しかし、今日独身者の74%が Match.com, eHarmony, OKCupid, PlentyOfFish.com. Chemistry.com等のオンライン・サイトで相手を見つけており、デート相手、結婚相手探し手段の主流になってきているという。最近の米国の科学専門サイト「Science Daily」でも、米国人の5人に1人(20%)は配偶者をオンライン・デートサイトで見つけていると伝えている。 同性愛者のデートサイト、ユダヤ系ロシア人等民族系サイト、ゲームおたくのサイト等特殊なデートサイトを含めると米国の独身者の6割が恋人や結婚相手をオンラインで見つけている事になると云う。 これまで独身者は職場や、パーティー、教会などの狭い範囲で配偶者を見つけてきたが、現在ではヤキトリが愛好者とか、アルティメート・ファイティングの試合(ホイス・グレーシーが始めた、ボクシング、レスリング、柔道等なんでもあり総合格闘技)が好きな候補者を何百万人とオンライン上で見つけられる程、選択肢が広がっている。どのサイト運営者も、最適な相手を捜し出し、幸せを届けると唱っている。 日本では出会い系サイトと云うと怪しくて、後ろめ感じがするが、米国では様相が違う。新聞に恋人募集の個人広告を出したり、Facebook に正直に個人のプロファイルを載せたりするお国柄だ。 デートサイトはゲーム、音楽に続き、第3位のオンライン市場に進化を遂げた. Marketed Enterpriseによれば、年7%で成長し、市場規模は2015年には17.6億ドル(1404.6億円)になると予想されており、オンライン・デートサイトは不況知らずで、急拡大している。最大のサイトは1995年に設立されたのはMatch.com (昨年の収入は5億1千8百万ドル)で真面目なサイトとして知られている。毎月35ドルの会費を徴収しているにもかかわらず、会員数1200万人で、相手を選択するプールが大きいだけに選択肢も広く、人気がある。 昨年の収入は16%増。しかしMatch.com は最近になって雨後のタケノコの様に増えてきた後発組(広告が主な収入無料会員費を唱う)サイトに押され気味である。Match.comは「今日のお勧めの5人」とか、どんな人が自分のサイトを訪れたかTrack Back出来る様にする等細やかな作業を行っている。 Match.comは蓄積された膨大な行動データーを基に[シプナス]というアルゴリズム(数学、コンピューティング、言語等の分野に置いて問題を解く為の効率的手順を定式化した形で表現する)を開発して、理想の相手を選び出す手法をとっている。後発組で人気のあるOkCupidは前もって用意した質問に対する回答に基ついたアルゴリズムを利用して最高のペアーの組み合わせを決めると云う。しかし、これらデーター分析アップローチはペアーの間に愛が生まれるかどうかまでは予測出来ない。最適な相手を選び出す為にはソフトウエア-に沢山の微調整が必要になる。だから、晴れて相性の良い恋人同士になったカップルのロマンティックなデーター収集に必死になる、これが将来の配偶者探しの成功の糧となるという。OkCupidはオンライン配偶者探しの分野でのGoogleになろうとしており、ユーザ-の全てのロマンティックなデーターを追跡して, コンピューターによる定量化を試みている。 一方eHarmony(昨年の収入は2億6千5百万ドル)は同社のサイトが2009年に全米で成立した結婚(1日平均542組)の5%に貢献していると発表した。この成功は結婚に至ったカップルを何年にも渡って経験的、客観的リサーチを行った結果である。満足のゆく相手選びに欠かせないのは、人格、価値観、趣味、ペアーを組むに至った人間関係のネットワークのリサーチであるという。EHarmonyは昨年売り上げを倍増させた。 Match.com や eHarmony等のオンラインサイト が会員を惹き付けるに事に成功すれば、する程,ユーザーを失うと云う構造的な問題に直面する。これらサイトは利用者に「貴方に最適な相手を見つける為に、我が社はこれだけの努力をしました。 貴方にぴったりの相手が見付かりましたので、デートなり、結婚なり、次のステップに進んでください。ここではこれ以上お手伝い出来ません」と伝えると、ユーザ-と理想の相手は会員登録を解消して去っていく、サイトは同時に会員2人を失うという皮肉な結果となる。オンライン・デートサイトは常に顧客(ユーザ-)を補充する必要性に迫られる。そこで、相手が見付かっても、自分のプロフィールをサイトに残しておく方法を編み出したZoosk と云うサイトがある。ユーザ-は他の会員のプロフィールを無料で見る事ができる。会員の中には、自分が決めた相手の他に、誰が自分のプロファイルを見ているのだろうと知りたがる。サイトの会員でいる限り、この無料のサービスは受けられる。そのサイト上の相手にメッセージを送ったり,受け取ったりするサービスには月30ドルの会費を払うサービスである。 実はZooskはFacebookの世界9億1千万人のネットワークをただ乗りするアプローチをとっている。 Facebook アプリとして提供しているCircl.esはFacebookに既に登録されているプロフ?ル(年齢、所在地)をベースにするので,新たに登録する手間が省ける。また友達として登録している人達の名前は、ユーザ-のデート相手候補として名前が表示されないし 候補者の偽情報を?まされるリスクも無くなる。他のデートサイトは自前の努力で会員数を増やしてきたのにたいして、ZooskはFacebookの画面から会員登録出来る、一気に2千万人の会員を持つ最大サイトになった。Facebookのユーザ-アプリ 「Yoke」もFacebook上の情報を分析して、恋人候補を挙げてくれる、これは出合い系サイトに近いが、Facebookに友達登録されたユーザの友達から候補者が選択される事もあるので、プロフィールに偽情報を使う人が候補者になるリスクは少ない。 候補者紹介の画面には、「共通の友達の意見を聞く」と云うボタンが設けられているので、友達の評判を聞く事もできる。Zooskのサイトを覗いてみると、ロマンスをお届けする出会い系SNS, ロマンスを見つけたり、サイト上で友達とこのロマンス体験を共有できると広告している。 運良く恋人を見つけたり、結婚に漕ぎ着けたハッピーなカップルを利用者として繋ぎ止める為に、Zooskは新たなギフトサービスを始めた。それはディジタル・スクラップブックや、劇場への招待券、料理店の割引券、専門家からのアドバイスなどである。 これらギフトはカップルがZoosk の会員である限り,利用出来る。多くのカップルは、完全なる結婚相手と出会った事を記念して,オンライン上のルディジタル・スクラップブックに初めてのキス、初めての出合いなど逆進して彼等のプロフィールを残したがると云う。 Zoosk の創設者Shayan Zaden とAlex Mehr,共に33歳,イランのシャリフ工科大学の学生で、卒論を書く為に2000年に米国に留学、4年前にZooskをサンフランシスコに設立した。ウオール街の投資家はオンライン・デートサイトとしてZoosk の将来性を高く評価している。ZooskはCanaan Partners とBessemer Venture Partners等のベンチャーキャピタルから4千万ドルの資金提供を受けている。 昨年収入を倍増させたeHarnonyも、今年Facebookの「The Story about Us」(我々に付いての物語)というアプリの利用を計画中だ。これは Facebook上に、相手を見つけた幸せなカップルが 彼等の現在の写真、子供が生まれた、子供の結婚式、孫が生まれたと更新された写真をその説明文と共に掲載する。カップルは時間を遡って。このアプリを見るために,一生eHarmonyとお付き合いする事になり、eHarmonyも会員数の減少を防ぐ事ができる。 今年はFacebookに蓄積された膨大なデーターをどう活用するか、Facebook がオンライン・デートサービス会社の主戦場となりそうである。 米国でもオンライン.デートサイトの金銭詐欺事件,性犯罪、なり済まし犯罪が増えている。特に、2月14日のバレンタインデーが近くなるにつれ犯罪が増えるという。米国司法長官Kamala Harris は今年3月、2011年に4千万の米国人が会員性デートサイトを利用し、10億ドル(840億円)をサイトに会員費として払ったと発表。 長官は犯罪を防ぐ為にオンライン・デートサイト経営者に、会員名簿に過去の性犯罪記録の有無を厳格にチェックするように事業指針を与えたと云う。 一方、無料デートサービスのOkCupidはサイト上のプロフィールのごまかしの見分け方を指南している。大抵の男性は身長を5センチ程ごまかしている。 自己申告の年収も実際は20%程少ない。サイトにアップロードされた写真はExif情報で、撮影された日をチェック出来る。人気のある写真程古い写真を使っている傾向があり、年齢層が高い人達程、昔の写真を使いたがる。 犯罪者は偽造のクレジットカードで複数のアカウントを持つ、時間をかけて相手を知る事が大事だ。 決して自分の電話番号等を教えてはいけない。話すときはSkype等の無料インターネット電話を使うべきだと教えている。 育った環境、脳科学、心理学のデーターを駆使したアルゴリズムで選び出した最適な相手と結婚しても、米国人の半分は離婚を経験するののだ。 不況時には二人で生活した方が経済的だ。米国政府の統計によると1000人あたりの離婚率は2007年3.6 人 、2008年 3.5人、2009年 3.4人に低下した。しかし2010年に離婚率は上昇に転じたと云う。景気が上向いてきているからだ。その離婚に的を絞った離婚ビジネスが出てきた。 米国で初めての"離婚EXPO"が4月初めNYで開催された。タイトルは「Smart- ever Smart」、想像以上に面倒くさい離婚をスマートにやり遂げる為に、専門家が手を貸すというものだ。 金融会社、旅行会社、ヘアーデザイナー、インテリアデザイナー、一流デパートのMacy's,など様々な分野の専門家がブースを設けて離婚後の相談にのっている。 離婚後気分一新する為に、ヘアースタイルを変え、新しい生活を始める。 離婚後仕事に就く事が予想されるので、仕事用のスーツをMacy's デパートで注文する。ついでに新しい生活の為に家具も注文する。 離婚後気分転換の為にカリブ海の島々に子供を連れて旅行するプランを提供。 事実離婚した女性が一番いきたがるのがカリブ海だという。 四人の専門家(ファイナンシャル・プランナー、会計士、不動産会社、インテリアデザイナーがワン・ストップ・サービスのコナーを設けて個人のニーズに合わせたアドバイスをしてくれる。米国では離婚後6ヶ月したら、独身と扱われるので、早く離婚すれば、独身者の低い税率の恩恵を得られる,だから離婚手続きは長引かせないと会計士のアドバイス。離婚後は賃貸住居の方が生活費が抑えられる、インテリアはグリーンか、ベージュ色がお勧めなどである。 離婚した女性に次の結婚相手を捜す手助けをするアドバイザーもいる。オンライン・デートサービスのメールのやり取りから相手の性格を判断する方法を教えていた。デートサイトが勧めた相手が過去に犯罪歴があるかどうか調べるサイトもある。これで安心して次の相手を探せると云う中年女性もいた。 終 柴田 |
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