ジャーナリストのパソコンノートブック |
(90)広がる貧富格差 (米と韓国の場合) |
「中間層の没落」 昨年秋格差是正を訴えるウォール街占拠(OWS)よれば運動家は金融工学サギと軍産合体戦争サギによって,富裕層は所得を大幅に伸ばした。上位1%を占める高所得者層は1979年-2007年間に所得を275%伸ばした.一方最下位20%の人々の所得の伸びはたった18%しか伸びず、格差が広がったと云う。 OWSの活動家は人口の1%を占める富裕層ばかりが所得を大幅に伸ばした事で,ウォール街のどん欲な支配が大きな所得格差をもたらしたと主張する。多くの中道左派の経済学者はレーガン政権時代の規制緩和で金融部門が拝金主義に走る一方で,共和党が支持基盤の富裕層向けの減税を進めるために公共事業や社会福祉の予算を削り続けた事が格差の拡大を産んだと責める。米国は現在景気が徐々に回復してきており,失業率は昨年9月の9%から,この2月8.5%まで回復してきているが,これ以上の回復は無理で,失業率は高止まりであろうと予測されている。高い失業率は,中間層(ミドルクラス)の長期失業によってである。以前の景気回復期と決定的に違うのは,景気が回復しても,以然の職場は戻らない、新しい雇用は生まれないから,失業率は高止まりとなったままである。革新的技術が開発されてもそれは仕事の合理化,効率化を進めるもので、さらなる失業を産む,だから失業率は高止まりとなったままである。 『1%の超富裕層と99%の貧困層』 格差是正を訴えるデモ隊の中に"We are 99%"と云うプラカードが目立った。これは1%の超富裕層が99%の米国民の資産を握っている"。それまでのミドルクラスが最下層に没落した為である.1%の超高額所得者層と99%の貧困層の2極化が起きていると訴えているのである。不況時に消えた職業の6割(390万人)が中流層ホワイト・カラー職のものであった. 1910年米国の中間層の事務職は全体の5%を占めていたが1980年代には労働市場の根幹を成す程拡大した。 グローバライゼーションとデジタル技術の進歩によって一般管理,事務職など米国中間層の仕事が失われた.電話の交換手の仕事はインドの女性にアウトソースされ,大手出版社の製作事務はインドの下請けにアウトソースされている.1999年中国がWTO(世界貿易機関)に参加した事で,スキルが必要な職種は安い賃金の中国での生産に移された。米国の高度なスキルを身につける力の無い人達は失業に追いやられたのである。 『滅び行く職種』 最近出版された「That Used To Be Us(私達の周りにかってあったもの)ト?マス・フリードマンとマイケル・マンデルバウム共著」は「これから失われる30の仕事」をリストアップしている。著者は世界中でのインターネットの定着により,技術の進歩はライフスタイル以上にビジネスのルールを劇的に変容させたと記している。この著書によれば,失われる仕事の「第5位」は「電話オペレーター」で既に33,200人分の仕事が失われ,2020年間までの10年間にされに23.3%減少すると云う。「第4位」は郵便配達人で38,100人分の仕事が失われ,2020年までにさらに12%減少するという。「第3位」は縫製作業員で42,000人分の仕事が失われた,さらに25.8%失われると云う。「第2位」は郵便仕分け人で,68,900の仕事が失われ,2020年までにさらに48.5%減少する。 「第一位」は農業従事者で96,100人分の仕事が失われ,2020年までの10年でさらに8%失われると云う。著者は縫製作業員と電話オペレーターの仕事がさらに新興国に移る事は避けられないという。 電子メールとスマートフォンの登場は破壊的変化をもたらした。今年1月末,米国で写真フィルム,機材で100の歴史を持つイーストマン・コダック社が破産を発表した。5万人の従業員が仕事を失う事になった。 電子メールとネット支払いの定着,さらにフェースブック等のSNSの登場で一番影響を受けるのは郵便に携わる職種の人々である。2020年までには全ての個人が自宅に郵便局の機能を持つと同じ事となる。秘書の仕事に従事する人々も何時失業するか怯える日々を迎えるであろうという。 参考の為に消え行く仕事の「第11位」は訪問販売員で11500人の仕事が失われ,2020年までにさらに7.5%減少。「第16位」はコンピューター・オペレーターで7,400人分の仕事が失われ,2020年までにさらに8.6%減少。 [22位]は ローン融資担当者で5,700人分の仕事が失われ,さらに2020年までに3.1%減少。 「第27位」は新聞特派員や記者で,3900人分の仕事が無くなり,2020年までにさらに10%減少。「第28位」は半導体,プロセッサー技術者でこれまで,3,800人分の仕事が無くなり,2020年までにさらに17.9%減少。コンピューター・オペレーターの仕事はかって技術的に熟練した作業員によっておこなわれてきたが、今や地球の反対側のインドの家庭の主婦によって, 技術者でなくても出来る簡単な仕事になってきているからだ。同様に半導体,プロセッサー技術者も,部品を扱うだけの仕事になってきている。 日米共にこの先伸びる仕事の分野は「介護」だけである。この先10年間で70.5%増えるという。 今日の貧富の二極化,中間層の窮状,失業率の拡大は必ずしもウォール街の活動家がヒステリックに叫ぶ「ウォール街のどん欲さ」によってもたらされたものでなく,ディジタル革命とグローバル化の進展で起きた構造的なものである事が分る。 『1%の財閥が99%の国民搾取』 韓国も1%と99%の貧富格差に苦しんでいる。 経済ジャーナリスト宣第仁は「1%のサムスンが99%の国民を搾取している。犯罪や汚職を顧みずに蓄えられたと富は全て自分の子孫に譲り渡している」と韓国の経済構造を指摘している。この数年,韓国の通貨ウオン売り介入によるウオン安で、かって世界の半導体の7割のシェアーを占めていた日本のメーカーはサムソンにシェアーを急速に食われた。日本で唯一の半導体メモリーメーカ-(DRAM)エルピーダーメモリーも2月に破産に追い込まれた。サムスンは低価格と大量生産で,世界半導体シェアーの30%を占めている。 これ程世界のスマートフォン,パソコン,電子機器市場を席巻しておきながら、さらに韓国のGDPの18%,輸出高の22%をサムスンが稼ぎだしておきながら、韓国民はその成長の恩恵を受ける事なく、失業,賃金の引き下げ,非正規職の採用で苦しんでいる。若者の失業率はフランスの失業率21%より高いと云われている。 韓国政府の発表では12月の失業率は4%であるが,韓国の失業率は短期アルバイトを含んでおり,国際的信用力は全く無い。2000年以降韓国ではGDI(国民給与所得)が常に,GDP(国民総生産)を下回ってきた。従って,消費支出は低く,社会保障,教育費も圧迫されてきた。お蔭で,韓国の出生率は2000年の1.47%,2001年には1.30%、2005年には1.08%と日本以上に少子化が進んだ。 『1997年IMF管理下の苦い経験』1997年アジア通貨危機に際してホットマネー(短期資金)が韓国より逃避して,都市銀行が外貨決済が出来なくなり、通貨ウオンは大暴落,財閥系の企業の倒産が多発した。IMFの緊急支援を要請した。2000億ドル拠出したIMFの管理下で,財閥の解体,金融政策,労働市場の改善が断行された。30あった大財閥の半分は消えて、サムスン,LG,SK等の財閥が残された。この時,外資規制が大幅に緩和され,外資の力を最大限に活用する政策が取られた。IMFの方針は韓国を援助するというより、 海外投資家の損を最小限に抑えるかが主な目的であった。その為に,外国資本(ファンド)による韓国企業乗っ取り等も画策する乱暴なものであった。多くの企業が解体された。当時韓国第二の起亜自動車は倒産して,現代自動車グループに入った。IMFの管理下に入りながら,マレーシアのマハティール首相等はIMFの改革案を毅然として断っている。 当時韓国にはIMFの命令を100%従わなければならない弱みがあったからだ。韓国は外国貿易に支払う外貨準備高が230億ドルあると嘘をついていたが,実際はたった30億ドルしかなかった。韓国が嘘の数字を出したのだから, IMF の乱暴な介入は「身からでたさび」である。 『ウオン安で躍動するサムスン』サムスンは主力電気メーカーとして,LGと共に温存された。サムスンは創業以来時の政権と癒着して成長を続けてきた。現在の政権李明博大統領の税制優遇やウオン安誘導政策と云う大企業重視の政策下,韓国の企業は破竹の勢いで成長し、日本のメーカーを完膚なきまで叩きのめした。サムスンをはじめ財閥系企業は2008年以降記録的な収益を上げてきた。会計報告書によれば,2008-2011年にサムスンも売上高は36.4%増加している。サムスンやLGの成長は隣国に日本を持つ事と,ウオン安を誘導する事で可能になった。 韓国企業は自分で部品を作り上げる技術を持たず,自前の部品工場を持たない,日本や台湾から部品を輸入して組み立てて,大量生産と低い人件費でディジタル家電のコモディティ化を成し遂げた。価格と量だけが判断基準になり,日本メーカーの機能,優秀な品質,ブランド名だけでは差別化出来ず,壊滅的な被害を受けた。最近はこのコモディティ化の競争は中国と韓国のメーカーに移ってきている。 最近LG電子は東京ドーム十個分の広大な土地に液晶3D画面のTVの工場を建設して,世界一のメーカーになると発表している。しかし、今年ウオン安が続くと云う保証はないし,中国がコモディティ化したTV生産で大攻勢をかけてくる可能性も高い。中国のTVメーカーはすでに世界液晶TV市場の2割の売り上げを占めている。もし,ウオン高に反転した場合,LGは過剰投資した事になる。 『韓国企業の構造的弱み』 1997年アジア通貨危機の時,援助要請を受けたIMFは韓国の外資導入規制を外し,企業乗っ取りを画策する米国等の利益集団に手を貸して,サムスンの持ち株比率の49%,ポスコの50%,SKテレコムの50%,現代自動車の40%,金融部門ではKB金融と新韓金融は持ち株の60%の持ち株比率の所有を外資に許し、外資がぼろ儲け出来る仕組みを作った。サムスンがTVや携帯電話を売れば売る程,外資の利益集団が儲かる仕組みで,それは「鵜飼」の[鵜]にたとえられる。これだけ,海外で売っているのに,韓国の外貨準備高が増えないのは,この仕組が原因だったのだ。電子部品調達は日本からの輸入に頼っている。韓国が海外での輸出攻勢をかければそれだけ日本の部品メーカーは儲かる仕組みになっている。韓国製品を海外で優位に売る為に無理矢理にウオン安に誘導すれば,日本からの部品の輸入コストはたかくなる。日本からに部品調達の急増で,韓国は日本との間で360億ドル(4兆6200億円)の貿易赤字を計上している。さらに韓国は非資源国であるので石油価格やその他資源の高騰が重くのしかかり,ウオン安政策でさらに資源の輸入は高いものにつく。韓国経済は八方塞がりである。 『労働者の不満爆発が怖い』 世界の電子機器市場を独占する程の韓国のメーカーの大躍進ぶりだが,利益は労働者に還元されていない。 サムスンやLG電子は非正規社員制を採用しており,彼等の給与は正規社員の60%で、国際的にも低い水準だ。若年層の失業率は20%以上である。しかし、大卒者は競って財閥系企業ヘ就職しようとする,反対に,学生は中小企業下の就職を嫌う。高い教育費をかけ,厳しい受験競争をしてきたのは中小企業に就職する為ではないという。お蔭で中小企業はひどい人手不足だ。ここにも韓国政府の財閥偏重政策の影響がでている。韓国政府の財閥重視のウオン安政策で,国民は輸入物価高騰で苦しみ,「政府は財閥ばかり優遇しており,国民の生活を顧みないと云う」不満が噴き出る。「1%の財閥と99%の国民」と云う図式は4月に総選挙を控える野党,民主統合等の「財閥解体論」に勢いを与える。李明博大統領は国民の不満をそらす事に必死だ。従軍慰安婦の銅像をソウルの日本大使館前に建てたり,竹島問題で若者の愛国心を煽ったり,若者の反日運動に火をつけようとしている。昨年12月17日の李明博大統領の訪日は完全に選挙を意識したものだった。訪日前に日本大使館前に従軍慰安婦の銅像を建て,野田首相との会談でも,その話題を最初に持ち出し,これから慰安婦の銅像を韓国中に建ててやると恫喝した。明らかに韓国TVの向こうの選挙民を意識したパーフォーマンスである。さらに野田首相が庭の散歩でもどうですかと手を差し出したが,彼の手を,大統領は乱暴に振り払った。しかし,タイミングが悪かった。大統領が日本で野田首相の手を振り払っているとき,北朝鮮の最高指導者金正日が亡くなったと云うニュースが流れた。李明博大統領は北朝鮮の動向を何もしらなかった事で批判された。さらに2度目の本格的選挙演説で、大統領が従軍慰安婦問題に抗議して日本大使館に抗議のデモを世界中に呼び掛けたが、世界中の日本大使館での献花台は慰霊の花であふれた。東北太平洋地震の記念日の3月11日であった。 『ヤバかった韓国経済』 本当のところ,韓国の李明博大統領は野田首相の手を取って涙を流して感謝すべきである。その2ヶ月前の10月17日野田首相が日韓通貨スァップ(外貨融資協定)の限度枠を5倍となる5兆4000億円まで拡大すると申し出た事で、韓国経済が崩壊寸前のところを救った。このスワップにより韓国が通貨危機に陥った場合,日本に紙くずのウオンを預け入れ,引き換えに日本円やドルを受け取って運用出来る。韓国は昨年2月以降貯蓄銀行の幾つかが潰れ,取り付け騒ぎが起きていたという。短期外債(キムチボンド)の急増についても海外金融機関によって憂慮されていた。(長期の外貨準備で外貨支払いが出来ず短期外債を発行して支払いを賄っていた)。これは韓国の巨大な短期外債の50%は中国によって保有されていたが,昨年10月中国は満期返済猶予期間の延長を拒否した。1997年に韓国がIMFに通貨援助を要請した時と非常に似通った状況であった。つまり韓国経済は短期資本を大量に発行してやりくりしていた)本当にヤバかったのであった。しかし,韓国はIMFによる屈辱的経済解体、外資による略奪は2度と経験したくない。米国政府は韓国の窮状を察知しており、1997年の金融危機の時韓国に舞い降りた米国の利益集団が損をせずに逃げ出せる策を考えていた(資金を引揚げるにも,ドルが枯渇していた)。米国は野田首相を脅かして日韓通貨スワップ協定を命じたと云う。野田首相はノコノコと韓国に赴いてスワップ限定額を130億ドルから 5倍の700億ドル(5兆4千億円)まで拡大する事を申し入れた。韓国は日本の信用を取った事で,経済破綻寸前で救われた。このニュースを耳にした時,韓国のサムスンやLG電子が無計画なTV生産拠点の拡大,マダガスカルなどのアフリカの耕地可能な土地の全てを買占めたり,やりたい放題を保証する事にならないかと心配した。アフリカではレアメタル鉱物資源開発で土地を買いまくっている。ホテル・ルワンダと云映画はルワンダのフツ族とツチ族の内紛で大虐殺(80万人以上)が起き,ホテル・ルワンダの白人が1000人以上を救った実話で,2004年アカデミー賞をとった。 先日のTVニュースでは韓国はルワンダで工場建設の為に買い取った避難民のゲットーの土地を大型ブルトーザーなどを次々と壊していく残酷な場面を写していた。逃げまどう難民の母親と子供達、韓国は国際的に反感を買うと思った。日本が長い間友好親善の為にカンボジアに橋を建設したり,小学校建設に協力してきた。私の高校の同期会でも過去十数年カンボジアの教育施設ヘの募金をしてきた。しかし、この数年韓国の大宇等の大資本が住宅ビル等の大型建設開発を遂行している。さらに許せないのは,カンボジアで学校建設に協力してきたのは韓国であると云い始めた事だ(韓国大使の現地での講演で)。 東北太平洋地震のお見舞いと集めた資金を竹島の武装化設備に使っている。 野田首相の通貨スワァップの拡大は,韓国のサムスンや LGに生産拠点の拡大を許し、此れによりどれだけの日本の電機メーカーが電子機器の生産から撤退,さらに破産を余儀なくされるのか?民主党の政治家の頭の中はどうなっているのか? 韓国の「朝鮮日報」紙が「韓国は外貨準備高3000億ドルを保有しているが,円高に苦しんでいる日本が円を海外に放出したがっているので通貨スワップを結んでやった」と恩義せがましく報じており腹が煮えたぎる思いをした。この3000億ドルの中身は短期外債のみで信用できない。日本のネット上では、日本企業に壊滅的打撃を与えた韓国を救う事はないという書き込みが相次いだ。自民党の政治家も「野田首相の無為,無策,無能ぶりを」批判した。自民党の政治家は「せめて竹島領土問題に付いて言及し,外交の条件を提示すべきであった」、「日本が外貨決済で窮する可能性はゼロ,日本側に何のメリットがあるのか?」、 「日本の首相が何のために出向いたのか全く不明な韓国訪問」。2ヶ月後の12月,訪日した李明博大統領に選挙用のパーフォーマンスでコケにされた野田首相は自分の馬鹿さ加減を思い知って欲しい。 昨年福島原発事故直後の水問題で,私はボトル飲料水を買ったが,韓国の水も2本買った。新聞では韓国が飲用水で協力と記事がデカデカ出たからだ。ところがその水は泥水で,カビ臭く,飲めるものではない。隣国が窮地にある時,こういう品性のない事をして儲ける韓国は許せない。この怒りを忘れない為に,このボトルは取っておくことにする。 (終) |
![]() |