ジャーナリストのパソコンノートブック
(62)子連れ里帰り日本人妻は誘拐犯で
国際手配される曲り角に来た,アジア観光旅行

 米国人と離婚した日本女性が,別れた夫に無断で子供を日本に連れ帰ろうとしたら誘拐罪と云う刑事犯罪で掴まってしまった。米国だけでなくハーグ国際協定を批准している80ヶ国に入国すれば,誘拐罪で掴まる事もあり得る。
スエーデン人の夫と離婚した日本女性が子供を連れて帰国。その後単身米国に渡った時,空港で身柄拘束された。スエーデンの警察から国際刑事警察機構(インターポール)を通じて幼児誘拐罪で国際手配されていた。彼女はスエーデンに送られ,裁判にかけられ,数カ月勾留された。英国人と離婚した日本人妻が,元夫に内緒で子供を連れて日本の実家に里帰りした。子供の口から里帰りがバレ,足首に発信機を付けたベルトを巻かれた,これは刑期を終えた性犯罪者や元誘拐犯に付けるものである。日本人は離婚すると親権は一方にしかなく,「子供は母親が引取ると」との家族観が根図強い。これは日本女性には子供のもう一方の親の同意を得ず,連れ去るという行為が誘拐であると云う感覚がない為だ。片方の親が子供を無断で国外に連れ出すという国際的児童奪取問題の解決のため締結されたのが「1980ハーグ条約」である。この条約では,適切な管轄裁判所で親権に関する決定を下す事が出来る。常居所がある国に子供を速やかに戻す為の手続きを規定している。常居所とは子供が生まれ,育った場所である(米国で生まれたら,米国にいなければならない)。又いずれの親に対しても,子供と面会する権利の保護を保証している。世界の80ヶ国が批准しているが,日本はG7の中で唯一,ハーグ条約に調印していない。現在まで,日本の政府は民事不介入と云う立場をとり,条約の締結は「必要性がない,国内の親権という法律との整合性を持たない」を理由で批准にニの足を踏んでいる。海外ではまだ批准してていない事を非難する声が高くなる一方で,法務省は2010年に批准する為に法整備を検討中と云うが,詳細は明らかでない。
  グローバル化が進み,国際結婚をする日本人が増えるにつれ国際離婚をする人も急増している。 国際結婚は2005 年の2万 7700件から2006年の 47000件と1.6倍増の一方,離婚は7900件から1万7100件と2.1倍に急増している。
離婚の際には結婚した時に考えてもいなかったような問題が出てきて,離婚後の人生の大半の時間を子供の親権裁判や出国問題に費やす事になる。離婚手続きがこんなに面倒だと知っていたら,国際結婚なんてしなかったのにと嘆く。
   国際離婚問題で一番厄介なのが子供連れ出し問題だ。外国で離婚した場合,日本の実家の世話になれば良いと甘い考えを持ち,子供を勝手に日本に連れ帰ってしまう日本人の母親が多かった。外国人の夫らは子の親権や面会権を求めて日本で裁判を起こしても,認められた例は殆どないという。あるカナダ人の父親は自分の子に会えたのは埼玉裁判所での1時間で,モニターカメラの監視下であったと悲嘆にくれていた。この問題は国際間で長年取り沙汰されてきて,日本人の母親の海外での評判は悪い。また国によって,米国,英国,フランス,ドイツ,オーストラリア,中東のイスラム圏の国々では離婚裁判で親権が認められていても,子供の日本への里帰りが認められない場合が多くなってきた。いくら子供が日本国籍を保有していても,子供のパスポートは裁判所に保管され,許可がない限り日本に帰る事が出来なくなっている。現在,このような判決が世界のほとんどの国で主流となりつつあると云う。母親は離婚後もその国に留まる事をなかば強制される(発信機をつけた足枷までつけられて)。これでは日本のお婆ちゃんは孫を一生抱けない事となる。ハーグ条約に加盟していないと云う事は,逆に日本で離婚した場合,片方の親が子供を海外に勝手に連れ出してしまうと,日本に残った親の方はハーグ条約による子供の返還を請求できなくなる(日本人男性とフィリッピン女性の間にこの問題が多く発生する)。条約に加盟すると,こうした問題を担当する「中央当局」が政府機関に設置され,相手国に子の返還を申し立てる事が出来る。これまで,米国大使館や,カナダ大使館で「親による子の奪取」に関するシンポジュームが毎年開催され,日本が加盟する様共同声明が発表されている。日本人の親との間で問題が生じている例は米国73件,英国36件,カナダ33件,フランス26件である,(2009年5月時点で)。  
   問題は日本の「親権」の考え方だ。養育費と面接交渉権は親権に含まれないと云う考え方が一般的な解釈である。一方ハーグ条約では男性側のDV(ドメスティックバイオレンス)などがない限り,共同で子供の監護権(共同親権)を保持,子供と同居しない方に面接権がある。「共同親権」は日本の民法では不可能であり,日本では離婚時には必ず親権を決定する必要がある,すなわち,片親の親権を剥奪する必要がある。TVのドラマでも見られるように,子の争奪をめぐって夫婦間の熾烈な争いが演じられる例が多い。離婚前の子供の連れ去りや虚偽のDVの申し立てなど手段を選ばない行為が横行する。このために夫婦間の感情的葛藤がさらに高まり,亀裂が深まる事によりなんら罪のない子供が被害を受けるケースが多くなってきている。
   日本の親権の考え方は明治時代から引き継がれた家長父制的家族構成原理を前提にしている。そこでは面接交渉権も共同親権も認められず,一方の親による子供の奪取も犯罪とは認められていない。一方米国や,英国ではJoint Custody (共同親権)が最も好まれている選択になっている。(親権授与は親の性別に関係ない)。いくら相手が不貞などの非があった配偶者でも親権を得る事ができるという。子供が乳幼児から8歳位までは,よっぽどの事がない限り100%親権が父親に行く事はなく,母親がPhysical Custody (子供と一緒に住む権利)を得る可能性が高い。親権には"legal Custody"と"Physical Custory"がある。Legal Custodyは子供の教育,保険,宗教,医療など法的な決定をする。片方の親にLegal Custodyが与えられたとしても,もう一方の親にはVisiting Right (訪問権)が与えられる。これは両親が離婚しても,父と母に平等に会えるのが子供にとって一番幸せと云う考え方からだ。米国では離婚した両親が同じ町に住み,3日ずつ平等に子供が行き来したり,週末のみを父親の家で過すなどの場面をTVドラマなどで見かける。実際にはJoint Custody (共同親権)はかなり面倒くさい。離婚調停で教育に関する決定権は母親,医療の決定権は父親と決めておいても,子供が母親と一緒にいる時急病になり,父親の決定を仰がないで救急病院に運んだら,離婚調停違反になるとか,母親が子供が行きたがらないので夏休みのキャンプを止めさせたら,母親が教育義務を怠ったと問題になる。関係がこじれた親達は相手に対する憎しみを子供を介してぶっつけあうという面倒なことになる。
  親権を取れなかったとか,Joint Custodyを嫌って,親が無断で子供を海外に連れだすという事件が後を絶たないと云う。アメリカ市民の子供で,海外に誘惑され事件は3000件に上ると云う。メキシコは連れ去り先としては最もポピュラーな地で,米国の多くの空港では,明らかに旅行者風の人であっても,片親だけで子連れの場合は,もう一方の親の正式な許可証の提示を求められると云う。それを知らない母親が,子供と先にメキシコに行き,現地で父親と落ち合おうとしたり,友人の子供を連れて行こうとすると,空港で誘拐事件として足留めをくらうという。
  私の周囲の外国人記者にも,離婚経験者が多い。平和的に行った例では米国の週刊誌の支局長が東京に赴任になった,離婚した妻と,息子を2年ずつ東京の父親と,NYの母親と過すという離婚調停合意した。この生活は父親がその後日本女性と再婚した後も続けられた。一般に子供のサポートは18歳まで,叉はハイスクールを出るまで受けられると云う。もう1人,米国の一流新聞の特派員Tのケースは,彼のハチャメチャな性格のために,日本女性との間に出来た子供の親権をめぐっての派手な争奪戦を何年も続け,周囲をはらはらさせた。この特派員は最初米国人の奥さんと赴任したが,優秀な奥さんはは米国の大学の先生に迎い入れられ,離婚した。晴れて東京で独身になった彼は歯医者で助手をしていた日本女性N-子と出会い,1年後に結婚した。ある日,彼は私の事務所に来て,「今日何の日か知っているか?」と聞いてくる,「今日は1年前に僕がN-子と出会った記念日だ」とバカバカしいのろけを云うぐらい,熱々の仲であった。言葉の関係からか,二人は余り意志の疎通が取れてない様であった。招かれたパーティーでも派手な夫婦喧嘩を繰り広げた。この特派員は奇妙な趣味があって,米国旗,日の丸,お経のような漢字,毛沢東の肖像など面白い柄のトランクスを作り,パーティの最中にズボンを降ろし,皆にトランクスを見せるというたわいないものだった。皆が大喝采している最中に,奥さんのN-子は「嫌だ!止めて!止めて!」と子供のように地団太踏んで泣きわめく幼さをみせた。その内N子は妊娠をした。夫はは直ぐ浮気を始めた。それが分ったのは私の葉山の家にディズニ?ランドの女性マネジャーのを招いた時だ,まるでプレーボーイ誌のプレーメートのような大人の女の色香をむんむんさせた金髪美人が勝手に招かれてきた。彼女は海岸にも出ず,一日中長い爪にマニキュアを塗り,体中に金粉を振りかけていた。この金粉は実に迷惑なもので,翌週インタビー最中会社の重役に金箔が額に付いていますと教えられたり,いつまでもあちらこちらに付いていた。このプレーメートはこの特派員と浮気していると告白し,日本人の奥さんN-子はどう云う女性かと探りをいれようとしていた 私は他人の情事不介入という姿勢を取り,妊娠中の彼女の胎教にも悪いと知らせなかった。その内,N-子は夫が浮気している,外泊してくる,金粉を付けて帰ってくると大騒ぎし始めた(私はこの金粉は米女性の離婚させる為の策略だと思った)。特派員Tは男の子が生まれた当初は初めて父親になったと云う喜びで良い父親を演じていた,息子には日本の戦国時代の武将の名前を3つも付けたが,その一つ直道が呼び易いとの事で結局皆に「なおちゃん」と呼ばれた。TはN-子に浮気をなじられ,離婚した。日本の離婚調停裁判所は男の子の親権を母親の方に認めた,もちろんTには面接権も,共同親権も認められなかった。親権を失ったこの特派員は調停で決めた慰謝料,養育費など払わずに米国に帰ってしまった。N?子は両親のもとで,働きながら,子供を育てた。男の子は父親に憧れるらしく,3才になった頃保育園の友達に「僕のパパは背が高くて,口ひげを生やしていて凄く恰好良いんだ」とウソをついて自慢した。写真でしか父親を見てないのだ。私の海の家に来た時も,この幼児は海岸にいた口ひげを生やしていたドイツ人に向って「ダディ,ダディ」と駆け寄って行き,周囲の涙を誘った。離婚で傷付くのは子供なのだ。
   数年後Tは他の米国雑誌の特派員として東京に戻ってきた,今度は米国の女性記者と再婚し,女の赤ん坊を連れていた。しかし,彼は満足しなかった。米国の父親が無類の幸せを感じるのは小さな息子をボールパークに連れて行き一緒に野球観戦する事だという。一方英国人の父親は小さな息子と一緒にサッカーの試合を観る事だという。彼は何が何でも息子の親権を取戻したかった。米国人の常識では,離婚に至った原因が婚姻中の不貞行為であっても,親権の決定や慰謝料の決定には彼の過失は考慮されないという。彼は米国で仕入れた中途半端な離婚裁判の知識で「父権」だけを振り回した。弁護士を雇い入れ,日本の裁判所でN-子が母親として不適格だと申し立てをした。その理由は息子が父親の望むアメリカン・スクールではなく,清泉スクールで教育を受けており,これは母親による虐待だという無茶な申し立てであった(アメリカンスクールの方が授業料が高い)。米国の「共同親権」では,教育は父親か,母親に決定権があると詳細に決めておき,弁護士が間に入り,違反したから,母親失格だと言い立てる事が出来るが。日本は共同親権を認めておらず,この記者Tは慰謝料も養育費も払ってないので,申し立てる資格もない。親権で考慮されるのは,子供が十分な年令であれば(8才ぐらいから14才まで),子供の希望が最優先順位となるが,息子は母親が慰謝料も,養育費も貰わず頑張って働いているの辛い姿を見てきているので,父親と暮らしたいと云えば,いかに母親が苦しむかを知っており,父親と暮らしたいとは云わなかった。母親には習慣的,持続的なアルコール引用,不法な麻薬常用経歴もなく,虐待履歴もない。今度は父親はN-子が精神的に不安定だと主張しようとして,息子の学校の前でN?子を誹謗するビラを配った。Tの日本人の秘書もそのビラを日本語に翻訳して配布したと云う。こうなると母親の方も,絶対,親権は渡さないと意固地になる。子供の親権をめぐっての熾烈な争奪戦はN-子の勝利に終わった。息子は長身でルックスが良いので15才ぐらいからファッション・モデルのアルバイトを始め,米国の大学進学の資金を溜めた。大学の卒業式では両親とも出席したと云う。さらに良いニュースは外国特派員協会の機関誌Number One 新聞にこの特派員がイラク戦争の取材に行く前に,心配した息子と母親違いの娘が駆け付けてきて父親と一緒の記念写真に収まってくれたと誇らしげな記事を投稿したことだ。
  もし日本がハーグ条約を批准すると,「共同親権」が認められ,日本女性は子供と共に日本に帰国するのがますます難しくなってしまう。元夫側の子供を返せと主張が圧倒しがちになる。しかし,相手国政府が日本の警察に元妻と子供を探してくれと要求したとしても,日本の警察はストーカー事件の例で分る
ように,「民事不介入」を通し,母親を逮捕したり,子供を連れ戻す事をしてくれそうも無い。日本人妻は問題への知識を身につけ冷静に対処しなくてはならない。日本に戻る日本女性の90%以上が,男性側のDVや幼児虐待など男性側に原因があると問題に詳しい弁護士は指摘。 現地の事情に疎く,言葉が通じず,裁判で親権を争っても認められないだろうと云う判断があるという。日本女性は日本に戻る時,DVなどの証拠を持ち帰らないので立証が難しい。アジア女性と結婚したがる米国人の男性には,支配下に置きたがる虐待タイプが多いと云う。親権を取るには虐待などの証拠(虐待後の写真,病院の診断書)などをしっかり残す事が必要だと云う,ハーグ条約でも,虐待をくわえる夫には共同親権を認めていない。
   離婚を考えている場合,婚姻期間に築いた財産についての情報が必要になる。配偶者と別れた後ではこのような情報を得る事は難しくなるので,離婚係争以前に適切な援助,離婚後の養育費と慰謝料の記録が必要だ。共有財産に関する明細書(銀行,証券口座明細書,遺産,不動産関連書類,健康&生命保険,年金医療保険など)のコピーを取っておく。又過去3年間の税金申告書などのコピーを取っておく事が必要である。そして離婚に詳しい弁護士を雇うことだという。もし財産や借金があり,子供がいる場合は弁護士費用を「投資」と考えた方が良いという,離婚弁護士の慰謝料や養育費を勝ち取る能力を侮ってはいけない。米国の離婚係争中の夫婦の慰謝料,養育費,子供の親権に関する戦いはまるで硫黄島やスターリングラーッドの激戦に匹敵するものだという,日本の母親も泣いて日本に戻るばかりではなく,参考にすべきだ。米国の離婚弁護士は実に抜け目ない。最近離婚弁護士はソーシャル・ネットワーキングサイト(SNS)のFacebook, MySpaceやツイッター(つぶやき)というコミュニケーション・サイトを隈無く調べる。これらサイトは配偶者に関する情報の宝庫であるという。離婚調停中の夫のガールフレンドがツイッター上で「今日,彼(夫)に高い宝石を買って貰ったの…」という「つぶやき」を見つけた弁護士はこの宝石は婚姻期間中に築いた夫婦の共有財産だ,第三者に払うとは,慰謝料をもっと払えるはずだと主張する。離婚係争中の夫がFacebookサイト上に新しいBMWでメキシコまでドライブしたと高級バイクと一緒の誇らしげな写真を投稿したのを見つけ,十分に慰謝料や養育費を払えるの能力があると主張する。子供の「親権」についても,法廷では母親がアルコールは飲まないと云っていたのに,Facebookのサイト上でタバコを口に,片手でワインボトルを振り上げているパーティでの酔っぱらった投稿写真を探し出し,彼女の証言は信用出来ない,子供の養育には不適格だと主張する。慌てて,自分のパーティー投稿写真を消しても,彼女の友人達も写真を投稿している可能性があるので,弁護士は友人達のサイトもチェックするという。    
   終      柴田
  
   





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