最近米国やカナダの弁護士や国会議員からなるNGO団体「法輪功迫害調査連盟」によって中国で拘禁されている法輪功学習者の臓器摘出、臓器移植の調査発表がなされた。その臓器移植の主な顧客は日本であり、すでに550名の日本人が臓器移植の手術を受けたと云う。来日したカナダの前国会議員、カナダ政府国務相アジア大平洋担当官デ?ビッド・キルガ?氏と会い話す機会があった。ある日本人患者が中国の病院で腎移植を希望した、中国の病院は8体分の腎臓が用意出来ると言ってきた。この患者は免疫適合が上手くいかず、日本に戻ってきたが、その2週間後、適合ドナーが4体用意してあると連絡を受け、即移植手術を行なった。手術は成功し、現在元気で暮らしていると語った。キルガ?氏が驚いたのは、適合するドナーを見つけるには少なくとも50倍以上のドナーが必要であり、適合するドナーが見付かるまで数年もかかると云われているのに、1-2週間の短期間で4体分の適合腎臓を見つけ出したことだ。これは膨大な数のドナー候補が常にスタンドバイしていることになる。摘出された臓器は短い時間(肝臓12時間以内、腎臓24時間以内)で移植手術を行なう必要があり、そのドナーが患者の手術に合わせてタイミング良い条件が必要である。中国では年間4,000件の肝臓移植、10,000件の腎臓移植が行なわれたが、患者の手術に合わせて、臓器を取り出す事が出来るというのは事故死、自然死などに依存して作り出せるものではなく、つまり、膨大な数のドナー候補の生死が、臓器摘出を行なっている病院のコントロール下にある可能性が高いと云う。
中国当局は死刑囚がドナーとなっていることが短期間での発見の理由としているが年間死刑執行件数と符合しない。中国における死刑執行数は年間3,000件から3,500件程度である。たとえ死刑囚が100%ドナーとなったとしても、中国側の臓器移植を合理的に説明出来ない。今年3月臓器摘出手術に関わる執刀医の元妻、及びジャーナリストが驚くべき事実を証言した。その証言によれば、中国藩陽市の鮮家屯という秘密収容所では2001年から拘禁中の健康な法輪功学習者から臓器を摘出し、証拠隠滅のため死体を焼却しているというのです。この秘密収容所には6,000人の法輪功学習者が収容されていて、2001年から2004年までに4,000人はすでに臓器を摘出され、遺体は焼却されたという。こうした臓器移植に関与しているある軍医の告白によれば、中国全土でこのような秘密収容所は36ケ所あるとのことだ。また国際人権弁護士デ?ビッド・マタス氏とキルガ?氏は今年3月中国の臓器摘出手術に関わる執刀医の元妻(法輪功学習者ではない)から、前夫であった医師が2003年10月までの2年間で麻酔をかけた2,000人もの法輪功学習者から角膜を切除したと云うビデオ証言を得た。彼はその時点で摘出手術の執刀を拒否したと云う。この外科医によると、角膜のドナーは他の外科医によって次々と臓器を摘出され、最後は火葬された為に、誰一人生き残ったものはいなかったと語った。キルガ?氏によると法輪功学習者は拘束されるとすぐ血液検査が組織的におこなわれている。血液検査は臓器移植のため必要不可欠であるからだ。しかし法輪功学習者にはその理由を知らされてないと云う。
法輪功は李洪志が中国東北部で1992年に創始したもので、「気巧」を使い心身の健康を促進する方法で、仏教と儒教の要素が取り入れられている。法輪功は煉功を通じて瞑想することにより、健康になり、莫大な医療費が節約されたため、中国政府からも推奨される気功流派となった。江沢民前主席と法輪功の対立は李洪志の著書「転法輪」が全国で100万冊領布され、高まり続ける法輪功人気は江国家主席や共産党指導部の警戒心を呼び起こした。7千万人とも一億ともいう法輪功学習者は6千万人の中国共産党員を凌ぐ、政治面で政府に反抗する可能性をおそれた政府は「中国法輪功」とその他の関連書物の出版を禁止したという。1998年に創始者李洪志は亡命してニューヨークに拠点を移した。1999年4月25日一万人の法輪功学習者が早朝から深夜まで、北京の紫禁城側にある、共産党中枢機関である中南海の外に集まり法輪功迫害抗議デモを行なった。1999年7月、当局から「邪教」(カルト教団)として非合法化され、政府と中国メディアによる反法輪功キャンペーンと大規模な取締りの対象になった。数十万人の法輪功逮捕者が出たと言うが正確な数は分からない。当時北京に住んでいたオーストラリア在住の作家ジェニファー・曾氏によると、2001年までの逮捕者は83万人に達したと言う。米国務省は2005年、中国に関する報告書で、警察は拘置所数百箇所、強制労働収容所340箇所で、合計30万人を収容出来ると報告した。その報告書では拘禁期間中に死亡した法輪功学習者は数百人から、数千人と推計している。法輪功自体政治性はないと主張しているが、創始者李洪志が米国に移って以来、中国共産党を倒す事に全力を尽くしており、これは明らかな政治運動である。これに対し、江沢民は法輪功学習者を中国から根絶させろと命令を下している。
キルガ?氏とマタス氏によると、中国当局は法輪功に対して独特の拘禁手段を取った。中国全土から天安門広場に嘆願や抗議をしにきた法輪功学習者が逮捕された時、身元をあかした場合は居住地に送還され、その家族も連体責任を問われ、巻き添えを食う。学習者の会社の上司、同僚、自治体幹部も責任を問われ、懲罰をうける。学習者は自分の家族を守り、郷土での「村八分」を避ける為に、自らの身元を明かす事を拒絶した。共産党当局も法輪功学習者多数の身元確認が出来ず、法輪功の仲間も彼らの行方が分からない。この身元不明者が当局による「臓器狩り」の対象になった。この身元不明者が当局発表死刑者数と実際に行なわれた臓器移植数のギャップを埋めるものであるとキルガ?氏は語る。
公表された報告よると、1999年までに、中国では30,000件の臓器移植がおこなわれ、1994-1999年の6年間で18,500件の臓器移植が行なわれたという。中国医療臓器移植協会の副会長石乗義教授によれば、最初の臓器移植からこれまで90,000件の臓器移植が行なわれたと述べた。こうなると2000-2005年間に(90,000 - 30,000 ) 60,0000件の臓器移植が行なわれた事が明らかだ。出所の明らかな臓器は1994-1996年の 6年間で18,500件 2000-2005年の6年間も同等な数字の臓器移植が行なわれたと推測して、教授の語った実際に行なわれた60,000件の臓器移植の内(60,000 - 18,500)41,500件の臓器の出所が説明つかないのである。身元を明かさない法輪功学習者から強制的に摘出されたという告発はその答えだと行って良いとキルガ?氏は語る。
中国では臓器移植がより組織化的に行なわれるようになった。1999年まで、肝臓移植センターは中国全土で22カ所しかなかったのに、2006年 4月には 500カ所にも増えた。肝臓移植手術件数は1999年 135件だったのが、2005年だけで 4,000件に上っている。腎臓移植の場合、手術件数の増加も顕著で1998年には3,596件から2005年の 10,000件に急増している。臓器移植は中国では非常に利潤の高いビジネスとなった。しかし移植を受けた人が払った高額の手術代が何処に行ったか分からない。軍部の病院の移植手術数は秘密である。この時期軍部病院が商業化した事と一致する。法輪功学習者に対する臓器狩りが中国政府機関による政策なのか、それとも各病院が法輪功学習者の弱い立場を利用した金もうけの結果なのか判断するのが難しいと調査団は云う。
今年の7月1日まで中国では臓器移植を規制する法律は制定されていなかった、又臓器売買を禁止する法律も制定されておらず、全くの無法状態であった。これは7月の「臓器移植暫定条例」の施行まで臓器売買が自由に行なわれてきた事を意味する。中国では移植法が制定されたと言っても、それまでの「臓器狩り」の問題が存在しなくなることではない。法律の立法と実施には大きな隔たりがある。最近改定された「中国国際臓器移植センター」の日本語のホームページでそれが伺える。このサイトは「これまで不透明な実態が指摘される中で、私達と類似看板を掲げて行なってきた関係者の中には臓器移植法で淘汰されていくと思われます」と書いてある。日本からオンラインオーダーが出来るようにと国際電話の掛け方まで記してある。移植希望者は必要なデーターをメール叉はファックスで送り、確定までには1-2週間、遅い場合で1ヶ月の待機が必要となります。腎臓移植ではHLA適合と言う観点から早いケースで1-2週間、遅くて1ヶ月が目安です。心臓移植、肺移植では1ヶ月以内のドナー決定が実現可能ですと書いてある。これは相変わらず膨大な数の腎臓のドナー候補がスタンドバイしており、心臓と肺のドナー(摘出により、命を失う)となる拘禁された法輪功学習者の死刑が1ヶ月以内に予定されると云う事を意味している。
移植費用は手術後の薬品(免疫抑制剤)などのほとんどを輸入に頼っている為、価格は高い、従って外国からの患者が多い。特に日本人は主たる「顧客」と言われている。移植費用の比較が掲載されており、日本での腎移植350-400万円(10年以上待機)、米国での日本人が受ける腎移植1600-2000万円、中国での日本人が受ける腎移植600-750万円。中国での心臓移植は1500-1800万円。角膜平均300?400万円。
日本人の為に、日本語の分かるスタッフが通訳や付き添いとして世話をします、上海料理は日本人の口に合うと思いますが、日本料理屋、日本食材の店も多くあり、食事も問題ないと懇切丁寧に説明しており、臓器移植が「ビジネス」化している事を伺わせる。
日本のマスコミは中国との経済関係を壊したくない為か、中国での法輪功学習者の拘禁、臓器狩りについて報道の自粛が行なわれているが、海外のメディアでは大きく取り上げられている。私の友人はこの夏ギリシャのホテルで偶然BBC ワールドTVで、法輪功の拘束者からの強制臓器移植の番組を見てかなりショックを受けたと云っていた。その番組では公開絞首処刑まで見せていた(中国では良くある事)、中国の法律では死刑は銃殺と制定されているが、銃殺では臓器を傷めてしまう為、今では臓器移植の為に殆どが絞首刑だとBBCのコメンテーターは語っていたと云う。中国では若い男性は警察に捕まったら最後である。幾つかの臓器移植センターのホームページには「若くて健康な男性の心臓提供出来ます、まだピクピク鼓動しています」などの宣伝が載っている。日本の法務大臣は自分の在任中一人の死刑も執行したくないと語っているのに較べ、中国では人の命がいとも軽く扱われている。
(終)
(終) 柴田
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