寄稿/投稿 | |||
第5回関東同期会講演 | |||
演題 インターネット時代の国際ジャーナリズムの新しい経験 | |||
柴田 瓔子 | |||
米国プランスポンサー誌東京特派員 | |||
同誌ニュースメール日本語版編集長 | |||
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私が人前で話すのはこれで2度目で、一番最初から英語でロンドン大学のRonald Dore教授から 招かれて「日本女性と労働」と題で話しました。その時の話は後で時間があったら話します。 字が読めない「文盲」をIlliterate, コンピューターを扱えないのを"Computer-illiterate" (コンピューターに関し文盲である)という意味です。 私は自分が"Computer-illiterate"と思ってきました。勤めていた英国の経済紙"Financial Times"が 1985年にコンピューター印刷に変わったので、東京からの記事はモデムにスィッチして、 e-mailで記事をロンドンに送り、パソコンを英文タイプライター代りに使うと云う最低限の事しか してこなかったからです。 「コンピュータ−文盲」に近い私が1990年代の終わりごろには、東京で唯一のInternet関係の 英語の専門誌 "Japan Inc"が発行されるので、編集委員(Contributing Editor)をやってくれと 云う申し入れがきて、今,これを逃したらITや, Internetと一生縁が無くなると仕事を引き受けました。 このJapan Incは月刊誌と云うprint media以外にその掲載記事をWebsiteで読める様になっており、 海外から物凄い数の読者がアクセスしてきました。記事の最後に私のe-mail addressが記してあります。 海外の読者から感想なり、質問なりが即座に私のところにfeed backされてきます。そこでそれまで 20年間Financial Times で記事を書いてきた時とは全然違う、新しい経験をしましたので その話しをします。 Internetは世界を狭くします。 ある日私の書いた「IT 企業の IPO(新規株式公開)と店頭株式市場やマザース等の新興証券市場」 の記事についてもっと詳しく知りたいので、明日東京に行って、話しを詳しく知りたい、都合はどうか? と云うe-mail が入ってきました、差出人はワシントン、ホワイトハウスの科学技術政策局長 (Director General of Office of Science and Technology Policy Bureau)となっていました。 私はこのe-mailに半信半疑で、妹にe-mailを見せたら、貴女、きっとかつがれているのよ! White Houseなんて Washingtonのコーヒー屋かLove Hotelに違いないと妹は云うのです。 2日目にこの局長が本当に私のマンションの前に立っていました。この局長によると彼は米国政府の 対日経済政策を策定していて、日本が不況から脱却するにはIT産業の育成が大事だ、それには 新規株式公開を簡易にさせ、資金調達ができるようにして景気回復を計る。IT産業は雇用問題も 解決すると云う対日経済政策を立案したのだそうですが、しかしFRB連邦準備委員会)の アラン・グリーンスパン議長に一笑にふされ、グリーンスパン議長は「日銀の金利の調節や、 市場への資金供給調節で日本は不況から立ち直れる」と主張したそうで この局長はグリーンスパンと 大激論をして、かなりカッカと頭にきているようで、グリーンスパンの馬鹿やろう、グリーン・ スパンをやっつけるのに理論武装が必要だ、もっと情報や数字が欲しいと私の書棚から本を 引っぱりだしていました。 その時「インタ−ネットは時空を越える」と云う言葉を思い出しました。インタ−ネットに よってWhite House内のこの局長とグリーンスパン議長との対立をそっくりそのまま、私の越中島の マンションに再現しているのです。本当にInternetは世界を狭くします。 この話しは後日談がありまして、2か月ぐらいしてから、White Houseの科学技術政策局長が 欲しがっていた数字が日経新聞に出ていたので、その記事を簡単に英語に翻訳して、e-mailで送って あげました。 その時、その局長の個人のe-mail addressを失してしまったので無神経にも、名刺に 書いてある、White Houseの代表のe-mail addressに送ってしまいました。 御存じの様に米国政府は外国のテロ組織からの指示のメッセージではないかとかなり神経質に なっていた時期で、いくら政府の高官と云えども海外からのe-mailがFBIによって検閲されて いたらしいのです。例えば、可愛い赤ん坊が生まれましたと写真を送っても、人の目に写る画像は 数百万個のメガピクセルから出来ていて、情報ビットを隠す事ができるそうで、あるプログラムを 通すとホワイトハウス爆撃するぞ!とか物騒な情報が出てくるそうです。私の下手な翻訳に何か暗号とか、 サブリミナルなメッセージが隠されていないかスキャンされたそうです。後で聞いたのですが、FBIは 私の身元を外務省に問い合わせたらしく、外務省の私のProfilingが"Highly Anglicize Japanese financial journalist"(非常に英国化した金融ジャーナリスト)となっていた事が分かりました。30年前 Financial Timesに勤めた時、編集長が外務省に特派員として送ると届けを出した時のProfilingが 残っていたわけです。 私には昔、国務次官補になった知り合いがいて、日本の首相が訪米時に、必ず首相夫人をどう もてなして良いか、首相夫人の性格なり趣味なりを聞いてきます。首相は政治的日程が決まっていますが、 その間、首相夫人をもてなししなくてはなりません。一番最初は鈴木善幸首相夫人で、趣味には、民謡と 盆踊りとなっているけれども、どうもてなして良いか分からないと云う相談でした。米国のフォーク ダンスにでも連れて行ったらどうかしらとアドバイスをしました。その次は海部首相夫人等と歴代の 首相夫人について聞いてきました。きっと「首相夫人の事は柴田に聞け」とか国務省にファイルが 残っているのかもしれません。現在小泉首相は独身ですから、国務省は悩まなくても良いですが。 物凄く印象的だったのは、通産相等との交渉にきた国務省の高官達が朝食をとりながら、最近の 日本の事情をbriefingをして欲しいと頼まれ、朝6時にパレスホテルで朝食に招かれました、彼らには 接待費も無く、超円高で、国務省のどこの課が私のコーヒー代を持ち、他の課がベーコンエッグを 持つなど、私の朝食代の振り分けで大喧嘩していた事でした。 世界が狭くなると云う点で、私が書いた日本のNTT Docomoなどの携帯電話事情の記事を見て, "Handelesblattと云うドイツの日経新聞と云われる経済新聞から、ドイツはこのままだと携帯電話で 日本や英国等に大きく遅れをとってしまう、新聞で携帯特集を出して大キャンペーンしたいので連載記事 を書いてくれと云う依頼のメールを受け取りました。ドイツ語が書けないと断っても、英語で書いて くれれば英語からドイツ語への翻訳家がいるから大丈夫だと云うのです。自分の書いた記事はドイツ語で 読めませんでしたが、始めて原稿料を"Euro"と云う通貨で貰いました。どうして私がドイツの携帯電話の 啓蒙、普及に協力しなければならないのか、分かりません。世界が狭くなった気がしました。 次にInternetの双方向性(Interactive)に近い経験をしましたのでそれについて述べます。 今年の一月に英国のBBC TVのドキュメンタリーのクルー5人がインタビューに来ました。この ドキュメンタリー番組は7月末に放映されました。これは私が1999年にNetの雑誌JAPAN INC.に 書いた記事をBBCがパクったもので、私はJapan Incの創刊号のドサクサに載せてしまったIT とか NETとか全然関係ない絵画についての記事ですが、皮肉な事に一番読者の反響が大きい記事で、書いて から4年も経つのに、未だに週1ー2本位のメールが入ってきます。日本のバブル時代に企業が 買い集めた絵画1万点が不良資産の担保として、銀行の地下倉庫に眠ると云う話です。大昭和製紙の 斉藤会長に114億円で落札されたゴッホの医師ガシェット像が美術史上最高の買い物で、斉藤会長が 亡くなった時はすでに担保として富士銀行の手に渡っていて、1999年に記事を書いた時は富士銀行の 広報担当者はこのゴッホの絵画は海外の蒐集家の手に渡ったと云う日経新聞の記事を「これで御納得を」 と見せました。ですから私の記事では、ゴッホの絵画はすでに海外に流れたと云う内容でした。 この記事もwebsiteで海外の読者が読めるようになっています。 するとアムステルダムに住むChristine Konigと云う女性がe-mailで、ゴッホの医師ガシェット像の 絵画は彼女のお祖父さんが持っていたもので、戦争中ナチスの絵画没収を逃れるためにNYの友人の カラマスキーに送った、カラマスキーはこの絵をボストン美術館に預けて展示していたが、 亡くなったので、遺族が遺産対策のためクリスティーズのオークションで大昭和の斉藤会長に 売ってしまった。私の記事は絵画の歴史(戦争中彼女のお祖父さんが持っていた)に触れていないので けしからん。あの絵画は私のものだ誰が持っているか教えてほしい。絶対日本にあるはずだという e-mailでした。 すると今度は英国の絵画コンサルタント(美術館の為に絵画を集めていた)ピルキントン氏から e-mailが来て、自分は富士銀行(後のみずほ銀行)から、このゴッホの絵画を買わないかという打診を 度々受けてきた、1999年から交渉の為に日本に4度も足をはこんだ、貴女の記事でゴッホの絵画が すでに海外の蒐集家に売れたと書いてあるが、あれは間違っていると云うものでした。値段の点で 折り合いがつかない。斉藤さんが7500万で落札したのに、富士銀行は9000万ドルでなくては 売らないと云うことでした。それからピルキントン氏が昨年末(2003年12月)日本に来た時に みずほ銀行と交わしたLetter of Content を見せて貰いましたが、そこには、みずほ銀行ロンドン支店に 口座(account)を作り、9000万ドルを振り込んで欲しいと書いてありました。 1月から2月にかけて BBC TVのドキュメンタリー撮影クルーが日本に来ているのを察知したのか どうか、2月末に朝日新聞に有名な美術評論家が自分はクリスティーズ でゴッホの絵画が1997年に 売られたという証拠の領収書を見たという記事でした。そこで、どうして5年もたった今頃になって このような記事を掲載する必要があるのかと云う疑問が湧きました。 当時3月決算前で、みずほ銀行株は売りにうられ、銀行は大赤字、確かみずほ銀行は3月に1兆円の 資金調達を計画中でした、あのゴッホの絵画が不良資産として残っていたら、大口株主にそっぽ を向かれてしまいます。そういう事情で、ゴッホの絵画はずっと昔に売れていて、銀行の手許にはないと 宣伝する必要があったかもしれません。サザビーズとかクリスティーズなどのオークションハウス はバブル時代随分ひどい事をしました、当時日本の企業にどうしたら偽者の絵画を売るかとか、講習会を 開いたり、現在、不良資産として銀行の地下に眠っている絵画にはこれらオークションハウスから 買ったにも拘わらずProvenance(絵画の履歴書、歴代の持ち主の履歴)のないものが多く、従って 価値が無い、偽者も多いのです)。ですから、1997年に海外の蒐集家に売れたと云う偽の領収書など 作るのは簡単です。彼らは今年の6月にも、BBCのプロヂューサーに会いに行き、この領収書を 見せたそうです。 しかし、偶然すごいを発見しました。このアムステルダムのKonig女史はかなりしつこい女性で、 私の記事の中で、斉藤会長はこの絵画をたった一度しか家族に見せなくて、斉藤さんの弟さんによると、 ChristiesとSazabyの人達が訪日した折、高級料亭「吉兆」にこの絵画を持ち込んで、絵を見ながら 会食したと書いてあったので、Konig女史はこの絵画を見た人達と各々会って、聞き出しているのです、 貴女の記事は正しかったと云うメ−ルを送って来ました。 そこで、どうしてこれまで執拗に「私の絵画はどこだ」と追跡するかと云う疑問が湧きました。 また銀行側はどうしてこれまでして絵画がまだ手許にある事を隠そうとするのか? 閃いたのはこの絵画がChristine Konig女史によって"War Loss Registry"として登録されている のではと云うものです。"War loss Registry"は、戦争のどさくさで美術品が盗まれたりした場合、 スイスのGenevaにある戦争裁判所に"War Loss Registry" (戦争による紛失届け)を出しておくと、 美術品がみつかった場合、裁判で元の持ち主にタダで返還されるというもので、ゴッホの絵画を買った 人は120億円まる損になります。私は英国のピルキントン氏にメールを送り、アムステルダムの Konig女史に確かめるように云いました。 ピルキントン氏はアムステルダムにすっ飛んでいき、Konigという女性と会い、彼女がGeneveの 裁判所に"War Loss Registry"として登録している事を知らされました。彼はSwissのGenevaの裁判所も 訪れ、さらに悪いニュースを聞きます。フランクフルト美術館もこの絵画が戦争中にナチスによって 持ち去られたと"War loss registry"と 裁判所に登録していました。 二重に登録されていては、誰も この絵画を買いません。 ですから、みずほ銀行は対外的には絵画が売れてしまって、手許にはないと云いながら、 自分独りでこっそり絵画鑑賞する酔狂な蒐集家にこっそり売る交渉をしている様です。むろん "War loss registry"の事はひた隠しにして。実はこの8月にもピルキントン氏の所に絵画を買わないか との打診があったそうです。 何年間も"War loss registry"の事を隠して、絵画売買の交渉しているみずほ銀行にコケにされて来たと彼は ひどく落ち込み、もうこの事で何も聞きたくないと云っていました。 とにかくゴッホの医師ガシェット像は銀行の地下深く眠るか、叉は自分独りで鑑賞する熱狂的な ゴッホ絵画の蒐集家の金庫に眠るか、永遠に闇に消える運命にあるようです。 この様に私の記事がインタ−ネットに掲載された為に、まるで釣の入れ食い状態で読者が飛びつき、 情報をメールで寄せてくれ、さらにこちらから提案した情報を、読者が詳しく調査してくれるなど、 Internetの双方向性(Interactive)性と云う点で新しい経験をしました。 この様に、読者参加型で、読者が調査した情報がfeed-backされて、さらに新しいstoryが出来上って 行くというのはメディアの新しい方向性かもしれません。 インターネットは非常に便利ですけれども "Double-edged Sword" (両刃の剣)だと思います、 便利と引き換えに弊害も目立って来ています。私が恐いと思ったのは、Internet は情報を世界各国に 瞬時にばらまく訳ですから、何か不都合な事が起きた時、証拠が世界各国にバラまかれ、消す事が 出来ないと証拠となってしまうと云う点です。 私はJapan Inc誌に日本の有望なIT企業、ネット関係の未上場の企業の紹介記事を担当して いましたが、当時、IT株ブームで新規公開株の紹介(プロフィール)記事は評判が良いのでもっと書け、 未上場の株の紹介記事ももっと書けと編集長からの圧力が掛かってきましたが、IT企業と云っても 海千山千で、技術はあっても、企業として経営能力があるか、見極めが難しいのです。証券界社は自分が 上場の引き受けした幹事した会社の情報しか、教えてくれませんし、情報に意図的なものがあります。 上場の前の数か月は"Quieting Period"と云って、上場予定会社は外の人と話す事が禁じられているのです。 そのうち海外の投資家から、お前の記事を見て、その会社に投資したが、株価が上場時に急騰して、 すぐ下落した、どうしてくれる、訴えるぞ!とか、インサイダー情報を貰っているのではないかと云う メール米国の投資家から入って来る様になりました。私は証券会社から何も貰ってないのに、未上場の 株のインサイダー情報を得て、ちょうちん記事を書いて株価操作した等と勘ぐられてしまいます。 よく考えてみれば、インターネットは一瞬にして情報を世界に拡大してしまいます。インサイダー 取引規制で訴えられるとしても、果たして、私の記事がどちらの国のインサイダー規制に引っ掛かるのか、 米国なのか、英国なのか、規制の強さも国によって違うでしょうし、それがはっきりする間では恐くて この仕事は出来ません、この記事の担当を下りました。 それから、英国圏のメディアにはLibel caseと云っての新聞の編集長を震え上がらせる名誉毀損の 法律があります。例えば十数年前にリクルート問題の記事をFinancial Times(FT) 紙に書いた時、すでに 日本の新聞、雑誌等が リクルートやエゾエさんのことを数週間前から騒ぎ立てて書いていました、 私がリクルート事件の記事を書いたその晩遅く, ロンドンから新聞社専属の弁護士から電話が来て、 国際電話を一時間繋ぎ放しで一行ずつ、日本と英国の法律に照らし合わせ、質問、検討して、その結果、 日本の法律ではこれは名誉毀損にならないが、英国の法律ではLibel case(名誉毀損)になり、掲載を 取り止める事になりました。リクルートがFTを訴えれば賠償金をとられる。リクルートがこの法律 を知らなくても、英国にはLibel 専門の弁護士がうじゃうじゃいて、リクルート社にFTを訴えろ とそそのかす可能性があるので、結局、エゾエさんが裁判で有罪に決まるまで記事は掲載されません でした。 私の友人でオーストラリアの経済週刊誌の編集長はLibel Caseが多すぎて、彼の仕事の8割が Libel Case対策に割かれるそうです。極端な例は腕時計の広告でデスクの上にパイプと腕時計と眼鏡が 置かれ 半分に折ったFinancial Timesが上下さかさまに置かれている何気ない広告でしたが、 その広告に使ったFinancial Timesの一面で辛うじて読めるHeadline (見出し)に書かれていた 英国企業が英国では名誉毀損にならないが、オーストラリアの法律ではLibel Caseに抵触すると、 彼の雑誌を訴えてきて多額の賠償金を払はなければならなかったと云っていました。この場合も libel case専門の弁護士が英国企業にこのオーストラリアの雑誌の広告の事を伝え、訴えたら儲かると そそのかしたそうです。 只でさえ面倒なLibel caseと云う法律がInternet時代どう云う拘束力を持つかまだはっきりしてないので す。私の書いた記事が国の名誉毀損法律に引っ掛かるか分からないのです。 皆さんはE-mailは送ってしまえば、秘密に情報を送る事が出来て安全という感覚を お持ちでしょうが、そうではないのです。米国の司法当局では、企業犯罪、企業間の訴訟で e-mail を一番確かな証拠として扱い、それは殺人事件などでDNA鑑定に匹敵するぐらい確実性の 高い証拠となるそうです。 米国最大の証券会社メリル・リンチは今月(10月)に、社員50、000人にe-mailに ついて再教育するキャンプに参加するように通達したそうです。メリル・リンチは社内の キャッチフレーズで、社員がe-mailを送る前に、たった2秒でもよいから、このメールがロイター等の 通信社に漏れ、さらに翌日のNew York Times, Washington Postや米国の主な新聞の大見出しとなる リスクを考え手から、送りましょう云うものだそうです。 米国の証券会社は皆、大口の投資家に対し「買い推奨」、「売り推奨」アナリスト・リポートを e-mailで送りますが、そこに必ずこれを読んだら"Delete"(消却)keyを押して下さいと但し書きを 記入してあるのですが、読む方はそんな但し書きが書いてある「銘柄」はよっぽど貴重な情報かも しれないということで、プリントアウトしたり、デスクに記憶させたり、友人に送ったりと、手が つけられない程拡散してしまっていて、"E-mail"は必ず証拠としてどこかに残っているとの事です、 昨年のエンロンとか、World Com等の会計疑惑問題で証券会社が慌てて、事件関係のE-mailをdelete (消却)していまったのですが、それが証拠隠滅として司法当局に摘発され、証拠隠滅の罰金だけでも 十億円に上ったと云われます。 どうして、司法当局が消却したかe-mailを証拠として見つけたかというと全ての会社が別の所に あるBack-up officeにコンピューターの記録を残してあるからで、エンロン等の大事件では司法当局は e-mailのやり取りの証拠をBack-up fileから楽に手に入れる事が出来たそうです。司法当局は 「ゴキブリとe-mailはこの世から消す事は出来ない」とうそぶいているそうです。 あるIT企業が倒産して、Back-up fileを消却する前に何か重要な情報がないか調べたら このIT企業の8割の男性社員がHard-core Pornogaphyをダウンロードしていたと云う事が分かり、 企業によっては特別なソフトを買ってきて、「ポルノ」だとか、「セックス」だとかのKey-wordが 入ったメールや「バイアグラ」(Viagra)などの売り込みのJunk(ゴミ)mailを受け付けないよう対策を っているところもあるそうです。 インターネットのインフラにコンテンツが追い付かない1999年ごろから、海外の情報通信会社、 リサーチ会社が次々に東京に事務所を開き、米国の大学卒業生、帰国子女を雇い、情報システムを 構築して事業を開始しましたが、これらの会社は米国や、英国の様にインターネットで探しさえすれば、 データーベースから情報なり、数字が出てくると思って云うようですが、私の長い取材経験から デスクに座ってパソコンをたたいているだけでは、日本では情報は取れません(得に英文情報は)、 私の記事をみて、海外のリサーチ会社証券会社から我社で働いてくれないかとリクルートのメールを 良くもらいます。断ると、必ず、「じゃー教えて欲しいのだけど、貴女はどのデーターベースを使って 記事を書いているの」と聞いてきます。彼らはデーターベースを知りたくて私を雇いたいと云ってきて いるのです。 その時私は「ママチャリ」と答えます。 都心に住んでいるので、ママチャリに乗って10分ぐらいで兜町の証券会館、電子工業界や色々な 工業会に出掛け、閲覧室の書棚の何段目に欲しい情報、数字があるまで知っています。 ゲーム器機、ゲームソフトの記事を書く時は秋葉原に出掛け、皆さんの孫ぐらいの子供に疑い深い目で 見られながら、店頭でゲームソフトの売れ筋情報を調べています。海外の情報会社はインターネットの System開発に先走り、インフラは整っても、肝心の流す情報(コンテンツ)が乏しいのです。 コンテンツが魅力的かどうか、調査能力があるかどうかで、差がつくのです。 世界のマスメディアはインターネットの導入を急ぐあまり、自分のクビを絞めていると云う気が します。情報はそれを与える対象の数が少なければ少ないほど価値があり、インターネットの様に 瞬時に世界中に情報が広まってしまうので情報の価値が低くなるのです。 ですから、新聞社も、出版者も情報通信社はそのrunning cost(運営経費)をいかに抑えるで競争して います。年配の特派員は給料が高いのでクビにしたり、原稿料を下げたりして、コスト削減に勤しんで います。一番ショックだったのは、AP通信社が戦後50年間東京にあったアジア支局をタイの Bangkokに移した事です。インターネット時代どこに事務所があろうと、大差ありません、そこで、 人件費の安いBangkokにアジア支局を移した訳です。東京事務所のスタッフは数人のフリーの ジャーナリストを除いて全員クビです。 スイスの特派員から聞いた話しでは欧州で現在7、000人のジャーナリストがインターネット によって失業していると云われています。 ここの外国人特派員クラブでも毎月2ー3人の特派員のお別れパーティーがあります、東京事務所を 閉じて、北京に事務所を開くと云った新聞社ばかりです。先月も、ガーディアン紙、ロスアンジェルス・ タイムス紙、AFPの特派員のお別れパーティーがあり、皆東京特派員事務所を閉鎖して、北京や上海に アジア支局を移すところばかりで寂しいかぎりです。 新聞や雑誌メディアはインタ−ネット化を急ぐあまり、良い記者をクビにしたりして、 肝心のコンテンツ(情報内容)を魅力的にする努力をしていません、自殺行為をしている様な気がします。 例えば米国の最大のメディア業者で、AOL.Timer Warnerと云うAOL (ネット 接続業者)Time (雑誌タイムや、Fortune誌の出版者)CNNと映画のWarner Brothersが合併 したもので世界最強のメディア融合と云われて来ましたが、今期AOL (インタネット部門)は986億 ドルの米国史上最大の赤字を出しました。いくらAOLのインターネットの接続を世界各国に広めても、 それに流すコンテンツが魅力がないので、アクセス数がじり貧になり、大赤字になった訳です。 大幅な黒字になったのは、タイム週刊誌、フォーチュン誌等の古いメディアでした。 インタ−ネットの属性として、物の値段を一番安いところに(中国)に収斂させていく性格が あります。先日もCargonewsと云う香港(中国)のインターネットの貨物、物流のnews mail から 特派員になってくれとメールを貰いました。原稿料は何と1word あたり$20c です。私がバブルの時代に Euromoney誌から払ってもらっていた1word 1$10cの5分の1以下です。300語の記事を書いても 6000円で、私の銀行でドル立て原稿料を円に換えるのに7000円の費用を取られますから話しに なりません。驚くのは東京も、NYも、中国の大連も、同じ原稿料なのです。大連の労働賃金は日本の 賃金の20分1です。全く冗談ではありません。 ジャ−ナリズムは構造不況業種です。私は幸い、日本の唯一の成長部門、いわゆるジジババ産業 つまり増加していくジジババ人口の年金を狙って海外の金融機関が日本の年金の運用や、Custodian (管理)の仕事に高い関心を持っているのです。米国のPlansponserとGlobal Custodianと云う 雑誌の特派員の 仕事をしています。これらの雑誌が1月頃、日本の生保等の機関投資家に海外の年金運用に関する情報を 日本語でインターネットのニューズメールとして提供する事になりまして、その日本語websiteの 編集長を勤めます。忙しくなりそうで、今から考えただけで肩が凝ってしまいます。年金のWebsiteの 仕事のストレスで討ち死にするのが私の最後かなーと思っています。 (終) 柴田 |
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